個別労働紛争解決手続代理業務は二者対立(紛争)の代理業務です。

 つまり、「使用者」である会社側の代理人になるか、「労働者個人」の代理人になるかです。

 弊所は主に「労働者個人」の代理人業務を行います。(もちろん、使用者側から依頼があればお受けすることが可能です)

1.労働者個人の代理人業務

 労働者個人の代理人業務は、相談の後「あっせん」や「調停」の申立(申請)書作成から始まります。

 申立書とは、簡単に言うと、「誰と誰の間でどのような問題(紛争)が発生していて、その経緯はこんな感じで、こういう解決を求めます」という内容を書面で作成します。

 それらを、公的機関や民間ADRに提出し、その後の交渉を代理します。

 なぜ「交渉」なのかというと、調停やあっせんは基本的に「和解(双方妥協して訴訟まではしない)」を目的にしているからです。

 その過程で、事実の確認や証拠集め、根拠法令などを示し、相手(または相手の代理人)と交渉します。(実際には調停委員やあっせん委員に説明します) 

 あっせんは原則1回で終了となりますので、訴訟のように何回も裁判所に行って証拠(物証等)や口頭で主張して解決するものとは違いますので、申立書はとても重要になります。

 そして、調停もあっせんも、申し立てがあってはじめて開始されますので、下記使用者のように突然やってきて対応ではなく、じっくり(とはいえ、時効の問題もありますので注意は必要ですが)準備して対応が可能です。

 弊所は、事情を確認し、証拠を集め、申立書の作成から調停やあっせんの代理業務を行います。

2.使用者(会社)の代理人業務

使用者(会社)の代理人業務は、相談の後「あっせん」や「調停」の答弁書作成から始まります。

 答弁書とは、簡単に言うと、「申請人(労働者)の申立書に記載され主張されている内容を認めるのか?認めないのか?(争わないのか?争うのか?)を、申請人の申請書の「主張毎に」答弁してゆくことになります。

 なぜ「主張毎に」を強調したかというと、主張に対し答えなければ、申請人の主張を「認めた」事になるため、申請人の主張毎に主張内容を正しく理解し答弁する事が大事だからです。

 それらの答弁を書面で作成します。

 そして、使用者(会社)側は申し立てされたことの通知が来てはじめて対応を始めることになります。当然答弁書の提出期限もありますので、その期限までに答弁書を提出する必要があります。

 もちろん使用者(会社)側はあっせんに応じる義務はありませんが、労働者側が訴訟になれば確実に勝てるレベルの証拠を持っている場合には、あっせんに応じて和解するほうが、時間も費用もかからずに済みます。

 そこには他の理由もあります。

 あっせんや調停では、未払い賃金の支払いに付加される「付加金」が認められることはありませんが、訴訟になった場合は付加金も加算される可能性があるため、支払額が倍になるという事態になりえます。

 また、直接あっせんや調停、訴訟の話ではありませんが、賃金(未払い賃金)の消滅時効は民法の改正により現在3年(経過措置)で、後(数年後)には5年になります。

 つまり、仮に未払いの割増賃金が1年で50万円あった場合で、それが過去3年間同じような事情があり、それを請求された場合には、最大150万円の支払い(+遅延利息)+付加金150万円のような額の支払い判決という事になりえなくもないということです。(すべての判決で付加金が認められる訳では無いようですが)

3.特定社会保険労務士に代理人を依頼するメリット

 ① 費用は弁護士に依頼するより安い

  当然ではありますが、弁護士に依頼するより特定社労士に依頼するほうが、費用は安く済みます。

 ② (特定)社労士は労働法に強い

  もちろん弁護士は法律業の最上位士業であり、法律には詳しいですが、全員が全員「労働法」に詳しいわけではありません。

  その証拠に、法律(社労士法第二条の二)において「社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。」と定められており、「労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令」に関して、弁護士を補佐することができるという立場にあります。

 ③ 労働法問題に特化した弁護士数より、特定社労士数の方が多い

  労働法に特化した弁護士の数は把握していませんが、個別労働紛争解決手続代理業務試験の合格者総数は約19000人弱で、そのうち何割が付記申請を行い特定社会保険労務士になっているか正確な数は分かりませんが、仮に8割程度であれば15000人程度の特定社労士が存在することになります。(弁護士が総数40000人程度ですので、その4割が労働法に特化しているとは思えません。)

  ですから、労働問題で相談できる先が多いということがあります。(社労士の総数は45000人程度)