労働者のための労働保険と社会保険⑩

第10回 高年齢雇用継続給付の活用方法

1. 制度の全体像(まずここだけ押さえる)

  • 給付の種類
    • 高年齢雇用継続基本給付金:60歳以後も同じ(又は同等)勤務先で働き続け、賃金が60歳時より75%未満に下がった月に支給。
    • 高年齢再就職給付金:60歳以後に基本手当(失業給付)を受給して再就職し、賃金が75%未満に下がった月に支給(※同一就職について再就職手当と併給不可)。
  • 年齢要件:60歳以上65歳未満。
  • 被保険者期間:原則5年以上
  • 支給単位各月ごとに判定・支給(最長:65歳到達月まで)。

改正(2025/4/1~):支給率の上限は10%、最大支給率となる低下率は64%以下に。経過措置で、2025/3/31以前に60歳到達の方は上限15%・61%基準が継続。

2. 対象と主な要件(共通)

2-1. 対象になるケース(共通)

  • 60歳以後も雇用保険の被保険者として就労(一般被保険者)。
  • 60歳時の賃金月額と比べて、当月賃金が75%未満に低下。

2-2. 類型ごとの追加要件

  • 基本給付金:60歳時点で雇用保険5年以上
  • 再就職給付金
    • 基本手当の算定対象期間5年以上
    • 再就職前日の残日数100日以上
    • 同一就職で再就職手当を受けていない、等。

※細かな例外・確認事項は、申請前にハローワークで要確認。

3. 支給額の考え方(新制度:64%・上限10%)

3-1. 支給率の決まり方(新制度)

  • 当月賃金/60歳時賃金(月額)=低下率
    • 64%以下 → 支給率10%
    • 64%超~75%未満 → 低下率に応じて直線的に逓減(75%で0%
    • 75%以上不支給

3-2. 早見(例)

  • 低下率64.0%10.0%66%約7.9%70%約4.16%74%約0.78%75%0%

3-3. 受け取る金額

  • 支給額=当月に支払われた賃金 ×(上記の支給率)
  • みなし賃金:欠勤・育児・介護等で控除された分は加算して低下率を判定(例:賃金18万円+欠勤控除3万円→みなし21万円→低下率70%→支給率約4.16%→18万円×4.16%=7,488円)。

3-4. 上限・下限(数値)

  • 60歳時賃金月額の範囲:上限508,200円/下限90,420円
  • 最低支給額2,411円未満は不支給。
  • 支給限度の調整:賃金と給付の合計が上限(例:386,922円)を超える場合は超過分調整。

※上記は告示に基づく現行数値(~令和8年7月31日)。金額は毎年8/1改定があり得るため、実務は最新公表値を確認

3-5. 経過措置(旧制度)

  • 2025/3/31以前に60歳到達の方は、61%以下=15%61%超~75%未満は直線逓減(75%で0%)。

4. 手続き(フローと締切)

【60歳到達前~】

・対象者の洗い出し/60歳時賃金月額(原則、到達前6か月平均)の算定

【60歳到達月】

・就労継続の確認(被保険者資格の継続)

【初回申請】

・受給資格確認票/賃金証明書等を添付して申請

・期限:最初に支給対象となる月の**初日から4か月以内**

【2回目以降】

・原則**2か月ごと**に所定の月で申請(事業主経由が原則、本人申請も可)

【決定・入金】

・支給決定→指定口座振込(各月)

提出は事業主経由が原則。賃金証明書の準備遅延=支給遅延につながるため、月次ルーティン化。

5. 高年齢再就職給付金(要点)

  • 対象:60歳以後に基本手当を受給→再就職し、賃金が75%未満に低下。
  • 支給率:上記3章と同じ(新制度:64%基準・上限10%)。
  • 支給期間の目安
    • 再就職前日の残日数200日以上最長2年
    • 100~199日最長1年
  • 留意:同一就職について再就職手当と併給不可。選択が必要な場合はハローワークで要相談。

6. 在職老齢厚生年金との関係(ここ重要)

  • 給付金を受ける月は、老齢厚生年金の一部が支給停止
  • 停止額のめやす(新制度)当月の給付額×40%(=賃金の最大4%分相当が年金側で減額)。
  • 旧制度(経過措置):上限15%の給付→最大6%分が年金側で減額。
  • ポイント:停止は年金側の調整。賃金や在老基準の改定に応じ、年金事務所で要確認

7. よくある“つまずき”と回避策

  • 75%を超える月が出る:役職手当・残業・歩合の増加で不支給に。就業条件の見通しを人事と共有。
  • 被保険者資格を外れる:週20時間未満へ変更で対象外に。前もって人事へ相談
  • 60歳時賃金の誤算定:賞与を混入/欠勤控除の扱いミス→台帳で再計算
  • 初回期限を失念「初回=対象月初日から4か月以内」を厳守。以後は2か月ごとに固定運用。
  • 育児・介護休業と重複:その月は受給不可(育児・介護休業給付と重複は×)。

9. FAQ(労働者向け)

Q. 64%以下まで賃金を下げないと受けられない?
A. いいえ。75%未満なら対象。64%以下だと**上限10%**が適用されます(新制度)。

Q. パートや短時間に切替えても対象?
A. 雇用保険の被保険者(原則週20h以上)であれば対象になり得ます。切替時は資格喪失に注意。

Q. 会社が申請してくれない場合は?
A. 原則は事業主経由ですが、本人申請も可能。必要書類の集め方はハローワークで案内してくれます。

Q. 再就職手当を受けた後でも再就職給付金はもらえる?
A. 同一就職については併給不可。個別判断が必要なときは、就職前に窓口で必ず相談を。

10. 用語の補足

  • 一般被保険者:雇用保険に加入する通常の労働者(原則週20h以上、31日以上の雇用見込 等)。
  • 基本手当:雇用保険の失業給付のこと。
  • みなし賃金:欠勤等で控除された額を戻して計算上の賃金とみなす考え方(低下率の判定に用いる)。

※本資料は2025年8月時点の公表情報に基づく。数値や様式は毎年8/1の見直し等があり得るため、実務は最新のリーフレット・Q&A・告示を必ず確認してください。

11. 参考リンク(公式)

※金額・上限等は毎年改定されます。説明時は最新のリーフレット・Q&Aで必ず確認してください。


NotebookLMを使い、Podcast風に上記資料を説明しています。