労働者のための労働保険と社会保険⑥

第6回教育訓練給付制度を活用したキャリアアップ講座の選び方と人気講座一覧

自分のキャリアに合った教育訓練講座の選び方

働く人が教育訓練給付制度を活用する際は、まず自分のキャリア目標や現在の仕事に必要なスキルを整理しましょう。キャリアアップやキャリアチェンジに役立つ資格・スキルを見極め、その取得につながる講座を選ぶことが重要です。例えば、「経理の知識を深めて昇進したい」場合は簿記講座を、「IT業界へ転職したい」場合はIT系資格の講座を検討するといった具合です。現在の業界動向や将来性も踏まえ、需要の高いスキル(例:デジタル分野や語学)や業務に必須の資格に注目すると良いでしょう。

具体的な講座を探す際には、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」を活用しましょう。この検索ツールでは、自分が希望する分野や地域、受講形式(オンライン・夜間・週末開講など)で絞り込んで、給付金対象の講座を簡単に検索できます。講座が給付制度の対象かどうかは必ず事前に確認することが大切です。また、専門実践や特定一般の給付金を受ける場合にはハローワークで事前にキャリアコンサルティングを受け、受給資格の確認を行う必要があります。不明な点はハローワークの相談窓口で確認し、制度を最大限に活用しましょう。

※教育訓練講座検索システム:https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku

教育訓練給付制度の種類と対象講座の概要

教育訓練給付制度には、目的に応じて一般教育訓練給付・特定一般教育訓練給付・専門実践教育訓練給付の3種類があります。それぞれ給付率や対象講座のレベルが異なるため、以下に概要をまとめます。

  • 一般教育訓練給付:働く人のスキルアップ支援が目的。英語検定(TOEICなど)や日商簿記検定、ITパスポート、医療事務資格※など、比較的短期間で取得できる資格講座が対象です。受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。※具体例:「TOEIC講座」「簿記講座」「ITパスポート講座」「医療事務講座」等。
  • 特定一般教育訓練給付早期のキャリア形成や再就職に資する講座が対象。宅地建物取引士(宅建)や介護職員初任者研修など、業務に直結する国家資格・公的資格講座が中心です。受講費用の40%(上限20万円)が支給され、さらに講座修了後に資格取得・就職した場合は**追加で20%(上限5万円)**が支給されます(※追加支給適用後は実質50%、上限25万円の給付)。
  • 専門実践教育訓練給付中長期的なキャリア形成を支援する高度な講座が対象。受講期間が1~3年程度と長期にわたる専門資格(例:看護師、保育士、介護福祉士など)が該当します。受講費用の50%(上限年40万円)が支給され、修了後1年以内に資格取得&就職すると追加で20%(上限年16万円)が支給されます。条件を満たせば最大で**講座費用の70%**が給付される手厚い制度です(※さらに2024年10月以降開始の講座は、賃金アップ等の条件で追加10%の給付拡充あり)。

上記のように、自分が受講する講座がどの給付種類に該当するかで支給率・上限額が変わります。次章では、20~40代の若年層やパート層に人気の具体的な講座・資格について、給付種類・費用・給付額の目安を一覧形式で紹介します。

人気講座・資格と給付内容の一覧

以下に、現在人気の高い資格講座について、給付種類(制度区分)、受講費用の目安、および給付率・給付額の目安をまとめました。自分の興味やキャリアに合う講座選びの参考にしてください。

  • 日商簿記(2級・3級)給付種類: 一般教育訓練給付(20%支給、上限10万円)。受講費用: 約5万~10万円程度(例:専門学校通学コースで約9.9万円)。給付額: 受講料の20%(例:受講料99,000円の場合約19,800円の給付)。簿記資格は経理・事務職のキャリアアップに直結しやすい人気資格です。
  • 介護職員初任者研修給付種類: 特定一般教育訓練給付(40%支給、上限20万円)。受講費用: 約5万~8万円(受講費用の全国相場)。給付額: 受講料の40%(例:受講料8万円なら約3万2千円支給)。介護業界への就職・キャリア形成に役立つ入門資格で、修了と同時に資格取得となります。給付金を活用すれば自己負担を大きく減らせるため、未経験から介護職を目指す方にも好評です。
  • ITパスポート給付種類: 一般教育訓練給付(20%支給、上限10万円)。受講費用: 約2万~3万円(通信講座の場合。例:ユーキャンの通信講座一括26,000円)。給付額: 受講料の20%(上記講座の場合5,200円の給付)。ITの基礎知識を証明できる国家試験で、社会人のリスキリングにも人気があります。
  • TOEIC対策講座給付種類: 一般教育訓練給付(20%支給、上限10万円)。受講費用: 講座の形式や期間により様々(例:短期集中講座で約10万円~、本格的なスクール講座では数十万円規模のものもあります)。給付額: 受講料の20%(例:受講料10万円なら2万円給付)。TOEICスコアは昇進・転職時のアピール材料となるため、英語力向上を目指す社会人に定評があります。
  • 医療事務(医療事務技能審査試験)給付種類: 一般教育訓練給付(20%支給、上限10万円)。受講費用: 約5万円前後(例:通信講座47,850円)。給付額: 受講料の20%(上記講座の場合約9,570円給付)。医療事務はパートや未経験からでも目指しやすく、病院・クリニックでの就職に役立つ資格です。給付金制度により比較的低廉な自己負担で資格取得を目指せます。
  • 保育士給付種類: 専門実践教育訓練給付(50%支給、上限年間40万円)。受講費用: 学習ルートによって大きく異なる(例:保育士養成専門学校では年間学費約100万円前後が一般的)。給付額: 受講料の50%を在学中毎年支給(年間上限40万円)+資格取得後就職で20%追加支給。保育士資格は国家資格であり、2年間の専門課程修了や国家試験合格が必要です。専門実践給付金を利用すれば最大で受講料の70%(2年合計で最大約160万円まで)が支給されるため、大きな経済負担軽減につながります。子育て支援分野で長期的に働きたい方には心強い制度です。
  • 宅地建物取引士(宅建)給付種類: 特定一般教育訓練給付(40%支給、上限20万円)。受講費用: 約10万~20万円程度(例:資格学校の宅建士総合講座 通学コースで約16.5万円)。給付額: 受講料の40%(例:受講料16.5万円なら約6.6万円支給)、修了後条件を満たせば+10%追加支給あり。宅建は不動産業で必置の国家資格であり、取得者は営業や管理業務で優遇されます。給付金を活用することで、自己投資を抑えて短期間での資格合格を目指すことができます。

以上のように、教育訓練給付制度を使えば受講料の一部(20%~最大70%)が支給され、自己負担を軽減しながら資格取得・スキル習得が可能です。20~40代の方やパートタイムで働く方でも、一定の雇用保険加入要件を満たせば利用できます。ぜひ本制度を上手に活用し、自身のキャリアアップに役立つ講座を見つけてください。

教育訓練給付の対象講座等の情報は、厚生労働省のホームページで確認できます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku_00001.html


NotebookLMを使い、Podcast風に上記資料を説明しています。

在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について

まずは気になる情報から

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」の公表
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 入管庁ホームページより
 「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」
 として、令和6年の事例を公表しています。

https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/08_00006.html

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・「技能実習生手帳再配布の御案内」についての更新
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 外国人技能実習機構ホームページより
 「技能実習生手帳再配布の御案内」についての更新
 として、再配布の対象や方法について案内されています。

https://www.otit.go.jp/news/cat2/4626e27de000370cf25032a598e8d351fa97209d.html

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・技能実習に係る訪問系サービスの従事について(周知) 
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 外国人技能実習機構ホームページより
 技能実習に係る訪問系サービスの従事について(周知) 
 として、案内がされています。

https://www.otit.go.jp/news/cat3/d104c3ccd557845402df5fab249ae605ac2f15c7.html

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整理等に関する省令案に関する御意見の募集について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整理等に関する省令案に関するパブリックコメントが実施されています。
 実施期間
 2025年7月25日から同8月23日

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495250108&Mode=0

 ※ 特定自主検査を実施する者に、必要な資格を有する事業者(事業者が法人である場合には、その代表者や役員)が追加

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・労働安全衛生規則の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 労働安全衛生規則の一部を改正する省令案に関するパブリックコメントが実施されています。
 実施期間
 2025年7月25日から同8月23日

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495250114&Mode=0

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・雇用保険法に基づく、支給額及び控除額の変更について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 官報 令和7年7月22日(本紙 第1511号)にて
 雇用保険法に基づく、支給額及び控除額について、複数の変更が告示されています。
 
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・労働者災害補償保険法に基づく、支給額等の変更について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 官報 令和7年7月25日(本紙 第1514号)にて
 労働者災害補償保険法に基づく支給額及び率について、複数の変更が告示されています。


7月25日に出入国在留管理庁(以下「入管庁」という。)より、令和6年の「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」として、事例の公表がありました。
これは、平成16年以降、在留特別許可の許否の判断の透明性を高める目的で実施されているものです。

事例の内容について詳細は記載されていませんので、大まかな事情と結果のみのものですが、以前に比べると、線引きが読みにくくなってきています。
以前は、「あぁ、この事情ならこうなるかもね」という、なんとなく(各種期間や違反内容等から)線引きが見えたのですが、今回の結果についてはそれが難しい内容になっています。

例えば
①発覚事由:警察逮捕、違反態様:不法残留、在日期間:約4年1月、違反期間:約2年1月、婚姻期間:約11月、夫婦間の子:無、刑事処分等:入管法違反(不法残留)により懲役1年、執行猶予3年の有罪判決
この内容であれば、不許可でも全然おかしくない内容かと思いますが、日本人の配偶者等の在留資格が認められています。

②発覚事由:出頭申告、違反態様:不法残留、在日期間:約4年2月、違反期間:約1年1月、婚姻期間:約1年、夫婦間の子:1人(未成年者)、刑事処分等:無
この内容であれば、許可でも全然おかしくない内容かと思いますが、不許可となっています。(ちなみに、配偶者の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」)

①については、相当特別な事情があったのか、もしかしたら政治家からの圧力などがあり、やむなくそのような判断をした等があったのではないか?と思わせる結果です。
②については、当事者や配偶者が相当傲慢な態度でもとったのか、面接の際に不誠実な対応を取ったなどかもしれません。

なぜそう思うか?
例えば
③発覚事由:出頭申告、違反態様:不法残留、在日期間:約6年6月、違反期間:約5年8月、婚姻期間:約4月、夫婦間の子:1人(未成年者))、刑事処分等:無
この内容で、在留特別許可申請が許可され、永住者の配偶者等の在留資格が認められています。

②と③を比較すると
・発覚事由は同じです。
・違反態様は同じです。
・在日期間は③の方が長く、違反期間が③の方が4年以上長いです。
・また、在日期間と違反期間の関係として、②は違反期間が約3分の1、③は約9割の期間が違反期間です。
・婚姻期間も②は1年、③は4月です。
・夫婦間の子の事情は同じです。
・刑事処分が無いことも同じです。
確かに、在留特別許可では、日本での生活の定着性も見るようですが、そうであれば①と②は在日期間がほぼ同じ(②の方が1月長い)で、②の方が違反期間が短く刑事処分も受けていない(①は刑事処分も受けている)という事情があります。
公表されている事情だけからだと、②なら許可、①なら不許可ではないか?と読み、線引きを考えるのですが、この内容では線引き基準を読み取ることができません。

入管庁の職員、特に違反者の対応はとても大変ですが、この辺の基準をある程度透明化させないと、やはり恣意的な判断を疑われてしまうかもしれません。
とはえい、明確な基準を表に出してしまうと、それを逆手に悪用する人が出てしまうので、表には出せません。
もしかしたら、そういう悪用者をかく乱させるために、今回はこのような事例を公表したのかもしれませんね。

労働者のための労働保険と社会保険⑤

第5回 失業給付(基本手当)の受給条件と手続き

失業給付(基本手当)とは?

雇用保険の失業給付(基本手当)は、会社を辞めて仕事が見つかるまでの生活をサポートする給付金です。働いていた人が退職後に新しい仕事を探す間、一定期間の収入を補う目的で支給されます。受給できる期間や金額は法律で定められており、条件を満たし所定の手続きを行うことで受け取れます。ただし、誰でも自動でもらえるわけではなく、受給には要件を満たし、ハローワークで所定の手続きをする必要があります。

給付の目的は、失業中の経済的不安を軽減し、生活の安定を図りながら1日でも早い再就職を促すことにあります。受給中はハローワーク(公共職業安定所)が就職支援サービスを提供し、職探し活動への取り組みも求められます。受給者は制度を正しく理解して活用し、新たな仕事へのスタートにつなげることが大切です。

受給できる人の条件(失業の状態とは)

失業給付を受け取るには、まず**「受給資格者」にならなければなりません。以下のすべての条件**を満たす人が「失業の状態」にあると認められ、基本手当の支給対象者となります。

  • 就職する意思があること – 単に退職しただけでなく、積極的に働こうという意思があること。
  • 就職できる能力があることいつでも働ける健康状態や環境にあり、労働する能力があること。
  • 現在職がないこと – 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業についていないこと。

これらを満たして初めて「失業中」とみなされ、雇用保険の基本手当の受給資格が得られます。言い換えれば、「働く意思と能力があり、求職活動をしているが職がない状態」であることが重要です。例えば、「しばらく休みたい」「すぐには働くつもりがない」といった場合は失業給付の対象外となります。また、ハローワークで求職の申し込み(求職登録)を行っていることも必要です。

雇用保険の加入期間と離職理由の影響

基本手当を受け取るための主な条件には、雇用保険の加入期間(被保険者期間)と退職した理由(離職理由)の2つがあります。自己都合退職会社都合退職かで条件や手続き開始時期が異なります。

  • 雇用保険の加入期間要件: 一般的に、退職前の直近2年間に通算12か月以上雇用保険に加入していることが必要です。この「12か月」とは、各月で11日以上勤務した月を1か月とカウントします(雇用保険法の規定)。もし加入期間が不足していると受給資格自体が得られません。例として、新入社員で在職期間が半年しかないような場合、自己都合で退職したときは基本手当を受け取れないので注意が必要です。
  • 自己都合退職の場合(一般の離職者): 上記の加入期間12か月以上に加え、先述の**「失業の状態」にあること**(働く意思・能力があり、求職活動中であること)が求められます。自己都合退職では、給付開始まで一定の待機・制限期間が設けられる点も影響します(後述)。
  • 会社都合退職の場合(倒産・解雇など特定受給資格者等): 加入期間要件が緩和され、退職前の直近1年間に通算6か月以上の加入でも受給資格を得られます。会社都合で離職した場合は条件が優遇され、給付制限期間(後述)がなく早く失業保険を受け取れるのが特徴です。例えば、入社半年で会社都合退職となった場合でも6か月の被保険者期間があれば受給資格を得られます。
  • 正当な理由のある退職(特定理由離職者): 病気や介護、契約期間満了などやむを得ない事情で離職した場合も、会社都合と同様に加入6か月以上で受給資格を得られ、給付制限がありません。自己都合退職でも正当な理由があるケース(いわゆる特定理由離職者)では、このような特例が適用されます。

まとめると、雇用保険の加入期間要件を満たし、かつ失業状態にあることが基本手当受給の前提です。その上で、離職理由によって給付開始のタイミングや給付日数に違いが出ます。自己都合退職の場合は条件がやや厳しく会社都合退職の場合は条件緩和と早期給付と覚えておきましょう。

所定給付日数の決まり方(もらえる日数)

基本手当を受け取れる日数(所定給付日数)は、離職時の年齢、雇用保険の被保険者であった期間(勤続年数に相当)、そして離職理由によって決まります。一般的には勤続年数が長いほど、そして会社都合退職など給付日数が優遇される離職理由ほど、もらえる日数が多くなります。

  • 自己都合退職(一般受給資格者)の場合:勤続年数に応じて90日~150日が所定給付日数となります。若年層~定年前まで全年齢で共通の日数テーブルが適用され、雇用保険の加入期間が1年以上で90日、5年以上で120日、10年以上で150日と段階的に伸びます。例えば、新卒後3年間勤務し自己都合退職した場合は90日間、15年間勤務の場合は120日間、20年以上勤務なら150日間の基本手当がもらえる計算です。
  • 会社都合退職(特定受給資格者)の場合:年齢区分と勤続年数によって90日~最大330日まで給付日数が手厚く設定されています。若い人ほど自己都合と同じか少し長い程度ですが、中高年で勤続年数が長いほど大幅に日数が増えます。例えば、20代で3年勤務なら90日(自己都合と同じ)、30代で5年勤務なら180日、45歳以上で20年以上勤務した場合は最長330日受給できる仕組みです。このように年齢が高いほど再就職に時間がかかる傾向を考慮して、45歳以上では給付日数がさらに延長されています。
  • 特定理由離職者(やむを得ない自己都合や契約満了等)の場合:離職理由によって2種類に分かれますが、一般に給付制限なしで日数優遇ありのケース(特定理由離職者Ⅰ)と、給付制限なしで日数優遇なしのケース(特定理由離職者Ⅱ)があります。前者(Ⅰ)は会社都合と同等の日数(倒産解雇と同じ優遇日数)、後者(Ⅱ)は自己都合と同じ日数となります。例えば契約社員で更新なし退職は特定理由離職者Ⅰに該当し会社都合同様の日数、病気退職など正当理由付き自己都合は特定理由離職者Ⅱで自己都合と同じ日数になります。

以上をまとめると、自己都合退職では最長150日、会社都合退職では最長330日と大きな開きがあります。例えば自己都合退職者の上限150日は約5か月分、会社都合退職者の上限330日は11か月分に相当します。多くのケースでは勤続年数が長いほど給付日数も増えるので、長年勤めていた方ほど手厚くサポートされる仕組みです。また、障害者など就職が特に困難な方の場合は**別枠(就職困難者)**としてさらに長い給付日数(最長360日)が設定されています。

(※)所定給付日数は**「離職日の翌日から1年以内」に失業の状態にある日について受給できます。1年を超えると日数が残っていても受給できなくなるため、給付日数をすべて消化する前に再就職しなかった場合でも原則1年で打ち切り**となります(後述の「受給期間延長」を利用した場合を除く)。給付日数が多い場合、受給期間も長期化するため、しっかり把握して計画を立てましょう。

基本手当日額の算定方法(もらえる金額)

基本手当日額とは、1日あたりに受け取れる失業給付の金額のことです。これは**退職前の賃金(日給換算)**に基づいて算出され、賃金日額の約50~80%に相当する金額が支給されます。一般に賃金が高かった人ほど給付率(支給割合)は低くなり、賃金が低かった人ほど割合が高く設定されています。これは収入が多かった人はある程度自己資力があるだろうという考えから、高収入者の置かれる給付率が抑えられているためです。一方で低収入だった人には手厚くし、生活を支えやすくする配慮があります。

賃金日額の計算方法: 退職前6か月間の給与総額を180日で割った額が**「賃金日額」になります(ボーナス等除く、各種手当は一定範囲で含む)。例えば月給換算で20万円程度なら賃金日額はおよそ約6,600円前後となります。この賃金日額に上述の50~80%の給付率を掛けたものが基本手当日額です。給付率は年齢や賃金額により細かく変動しますが、多くの方は50~80%の範囲に収まる**よう計算されます。

基本手当日額の上限・下限: 基本手当日額には法定の上限額と下限額が定められています。令和6年8月からの上限額は年齢区分により7,065円~8,635円となっており、それ以上高い賃金だった場合でもこの上限が適用されます。逆に最低でも2,295円は保証されており、賃金が非常に低かった人でもこの下限額が支給されます。例えば賃金日額が1,500円相当のパート勤務者でも実際は2,295円(下限額)が支給されます。

参考: 基本手当日額は毎年見直されることがあります(賃金水準の変動に応じて毎年8月1日に改定)。自分が受給するときに具体的にいくらもらえるのか、その時点の上限額・下限額や自分の賃金日額に対する給付率を確認しておきましょう。

離職票の取得から受給開始までの手続きフロー

ここでは退職後に基本手当を受給するまでの一連の手続きを、順を追って説明します。新入社員やパートの方にもわかりやすいよう、フローチャート形式で流れを整理します。

  1. 退職と離職票の入手
    まず勤務先を退職したら、会社から**「雇用保険被保険者離職票-1・2」(離職票)が交付されます。離職票は雇用保険の受給手続きに必要不可欠な書類**で、退職日から10日程度で会社から郵送されてくるのが一般的です(会社によっては手渡しの場合もあります)。離職票には退職理由や雇用保険加入期間などが記載されており、ハローワークでの審査に使われます。退職後2週間ほど経っても離職票が届かない場合は、会社に確認しましょう。万一、会社が倒産した・担当者と連絡がつかない等で離職票が手に入らないときは、ハローワークに相談すれば対処してもらえます。
  2. 必要書類の準備
    離職票が手元に揃ったら、ハローワークでの申請に備えて以下の必要書類を用意します。
    • 離職票-1・離職票-2(会社から交付されたもの)
    • 雇用保険被保険者証(在職中に会社から渡されている書類)
    • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等)
    • マイナンバー確認書類(マイナンバーカードが無い場合は通知カードや住民票など)
    • 証明写真 2枚(縦3cm×横2.4cm、最近6か月以内に撮影の上半身)
    • 本人名義の銀行預金通帳またはキャッシュカード(給付金の振込先確認用)
    • (障害者手帳等、該当者のみ)

書類不備があると手続きに時間がかかるため、退職後なるべく早く準備しておきましょう。特に離職票は発行に時間がかかる場合もあるため、退職したらすぐ会社に発行を依頼することが大切です。離職票が届くまでの間に他の書類を揃えておけば、離職票入手後スムーズに手続きができます。

  1. ハローワークで求職申し込み・受給手続きをする
    必要書類が揃ったら、居住地管轄のハローワークに行き、求職の申し込みと雇用保険の受給手続きを行います。具体的には、ハローワークの窓口で求職申込書に記入し(事前にオンライン仮登録していれば一部省略可)、前述の書類一式を提出します。窓口では簡単な職業相談(今後の求職方針の確認など)も行われます。ここでハローワーク側が**受給資格の確認(加入期間や離職理由のチェック)を行い、問題なければ「受給資格決定」**となります。

ポイント: 求職の申し込み(求職登録)は、「働く意思あり」を示すため必須です。会社を辞めただけでは自動的に失業保険はもらえないので、自らハローワークに行き、求職者登録と受給手続きを行う必要があることを覚えておきましょう。

この書類提出を行った日が「受給資格決定日」となり、その日から7日間の待期期間がスタートします。同時に、ハローワークから**「雇用保険受給者説明会」**の日時が指定されます。説明会への参加は受給に必須なので、指定日時を忘れないようメモしておきます。

  1. 待期期間(7日間)
    待期期間とは、受給資格決定日から連続7日間、基本手当が支給されない期間のことです。この7日間は**失業給付の世界共通の「待機」**であり、離職理由に関わらず全ての受給資格者に課されます。待期期間中は給付金は一切支給されませんが、求職活動は継続して問題ありません(多くの場合、待期中に雇用保険説明会が開催されます)。7日間経過した日の翌日に待期満了となり、この日以降が基本手当の支給対象期間となります。

例: 4月1日に受給資格決定した場合、4月7日までが待期期間で、4月8日から支給対象となります。

  1. 給付制限期間(自己都合退職者のみ)
    自己都合退職など一部のケースでは、待期満了後もすぐには給付が始まらず、さらに一定期間の支給停止(給付制限)が設けられます給付制限とは、待期終了後からさらに一定期間(原則1か月)基本手当が支給されない期間のことです。令和7年(2025年)4月以降の自己都合退職では給付制限は原則1か月となりました(それ以前の退職では原則2か月)。この間、失業認定は受けますが基本手当の振り込みはありません。
    • 繰り返し自己都合退職した場合: 過去5年以内に2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給した経歴がある場合、給付制限は3か月に延長されます。
    • 重責解雇(重大な責任による解雇)の場合: 自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合も給付制限3か月です。

会社都合退職や特定理由離職者の場合、給付制限期間はありません。待期期間終了後、直ちに基本手当の支給対象となります。ただしいずれの場合も待期7日間は共通なので混同しないよう注意しましょう。

まとめ: 自己都合退職では7日+原則1か月(2025年以降)=約1か月強は手当を受け取れません。一方、会社都合退職では7日後すぐに給付開始となります。

  1. 雇用保険受給者説明会への参加
    受給資格決定時に案内された雇用保険受給者説明会に出席します。この説明会は基本手当を受給する全員が一度は参加必須のもので、ハローワーク職員から失業給付の受給手続きの流れや、求職活動のルールについて説明を受けます。説明会当日は雇用保険受給資格者証(受給資格の証明書)と失業認定申告書が交付されます。受給資格者証にはあなたの給付日数や日額などが記載されており、今後の失業認定日に必要となる大事な書類です。失業認定申告書は後述する失業認定の際に求職活動状況を報告する書類で、毎回提出することになります。

補足: 説明会は通常ハローワーク内で定期的に開催されており、待期期間中または給付制限期間中に行われます。指定された日時に必ず参加してください(やむを得ず欠席した場合はハローワークに相談を)。

  1. 初回の失業認定日と基本手当の振り込み
    ハローワークが指定した失業認定日(認定日)に出頭し、初回の失業認定を受けます。失業認定日とは、4週間に1度ハローワークで「失業の状態にあること」の確認を受ける日のことです。初回認定日に持参するものは、説明会で受け取った雇用保険受給資格者証失業認定申告書です。初回については少なくとも1回以上の求職活動実績があれば失業認定を受けられます(多くの場合、説明会への参加自体が求職実績とみなされます)。

初回認定が無事行われると、その約1週間後に基本手当が銀行口座へ振り込まれます。初回振込額は、待期期間満了日の翌日から初回認定日までの日数分です。ただし自己都合退職で給付制限がある場合、実際の初回振込はさらに先になります。会社都合退職の方が比較的早く初回振込を受けられる傾向です。一般的に、手続き開始から初回振込までは約4週間程度かかるとされています。スケジュールに余裕をもって手続きしましょう。

: 自己都合退職で4月1日に手続きをした場合、7日間待機+1か月給付制限があるため、初回認定日は5月上旬になります。初回振込は5月下旬~6月頃となり、それまで収入が途絶える点に注意が必要です。一方、会社都合退職なら4月中に初回認定・振込が行われ、給付開始が早まります。

※令和7年1月27日より、ハローワークへの来所が難しい求職者は、オンラインによる失業認定が受けられるようになりました。

  1. 継続して受給する場合の認定日(2回目以降)
    基本手当の受給を継続する場合、4週間ごと(約1か月ごと)に定められた失業認定日にハローワークへ通い、失業認定を受け続ける必要があります。2回目以降の認定では、直近の認定対象期間に少なくとも2回以上の求職活動実績が求められます。例えば求人への応募、企業面接への参加、職業相談の利用などが実績になります。認定日に提出する失業認定申告書に、期間中に行った求職活動の内容を記入し報告します。

認定を受けるとその期間(通常28日分)の基本手当が支給決定され、認定日から数日後に指定口座へ振り込まれます。このサイクルを、所定給付日数を使い切るまでまたは就職が決まるまで繰り返します。給付日数が残っている限り、4週間ごとに失業認定日→基本手当振込を繰り返す形になります。

注意: 失業認定日はハローワークごとに指定された日程で行われ、指定日に出向かないとその期間の手当がもらえません。やむを得ない理由なく認定日に行かなかった場合、受給資格が取り消されることもあります。必ず決められた認定日にハローワークに行きましょう。

  1. 受給終了または再就職
    所定給付日数分の基本手当を受け終えるか、あるいは途中で就職先が決まった場合、失業給付の受給は終了となります。給付日数をすべて使い切る前に就職が決まった場合には、後述する再就職手当(就業促進手当)を受け取れる場合があります。再就職手当を受給した場合でも、残りの基本手当日数は消化扱いとなり失業給付は終了します。

通常、受給期間(基本手当の有効期間)は離職日の翌日から1年間です。給付日数が残っていても、この1年の期限を過ぎると受給できなくなるため注意してください。ただし、病気や出産などですぐに求職できない場合は受給期間を延長できる制度があります(後述「受給期間の延長」参照)。

再就職や受給終了にあたっては、ハローワークへの報告・手続きが必要です。就職した場合は基本手当の支給停止手続きを行い、雇用保険受給資格者証は手元で保管します。万一短期間で離職し再度失業状態になった場合、残り日数を受給再開できることもあります。受給終了後に再度離職した際は、新たに受給資格を取得していれば再び失業給付の申請も可能です。

以上が退職から基本手当受給までの一連の流れです。図解すると以下のようになります(自己都合退職の場合):

  • 退職離職票入手ハローワークで求職申込・受給手続(受給資格決定)7日待期(自己都合なら+1か月給付制限)雇用保険説明会参加初回失業認定日基本手当振込開始以降4週間ごとに失業認定・振込再就職または支給終了

具体例:新入社員が自己都合退職した場合

最後に、典型的なケースとして新入社員が自己都合退職した場合の受給シミュレーションを示します。実例に沿って流れと給付内容を確認しましょう。

例: 大学卒業後、Aさん(25歳)は正社員として1年間勤務しましたが、家庭の事情で自己都合退職するとします(離職理由:自己都合退職、特定理由該当なし)。Aさんの在職期間はちょうど12か月、退職時の給与は月額20万円程度でした。

  • 受給資格の確認: 雇用保険の被保険者期間は在職12か月で条件クリアです(自己都合退職の場合、直近2年で12か月以上の加入が必要)。Aさんは受給資格者となり得ます。また、離職後も働く意思と能力があり求職活動を行う予定なので、「失業の状態」に該当します。
  • ハローワークでの手続き: 退職後、会社から届いた離職票を持って管轄ハローワークへ。求職の申し込みと受給手続きを行い、○月○日に受給資格決定となりました。ここから7日間の待期に入ります。
  • 待期と給付制限: 自己都合退職のため、7日間の待期満了後さらに1か月の給付制限があります(2025年4月1日以降の退職なので給付制限は1か月)。したがって、手続き日から約1か月後までは基本手当の支給がありません。この間に雇用保険説明会へ参加し、求職活動も継続します。
  • 所定給付日数: Aさんの場合、自己都合退職かつ勤続1年なので所定給付日数は90日です。つまり最大90日間分の基本手当を受け取れます(受給期間は離職翌日から1年間)。
  • 基本手当日額の目安: Aさんの退職前6か月の平均賃金日額は約6,600円と算定されました(20万円/月程度と仮定)。自己都合退職で25歳という条件では給付率はおよそ60%前後となり、基本手当日額は約4,000円と見積もられます。実際には年齢区分と賃金額から細かく算定されますが、大きく外れることはありません(※上限額6,945円・下限額2,196円の範囲内)。
  • 初回認定と振込: 待期7日+給付制限1か月を経て、手続き日から約5週間後に初回の失業認定日を迎えました。Aさんは求職活動を着実に行い、無事認定を受けました。初回振込はその認定日の約1週間後に行われ、基本手当約20日分(給付制限明けから認定日までの日数分)が銀行口座に振り込まれました。金額にすると約4,000円×20日=8万円程度になります。
  • 継続受給: その後もAさんは再就職先を探しながら毎月ハローワークで失業認定を受け、2回目以降は4週間ごとに約4,000円×28日=約11万円ずつ振り込まれました。90日分の基本手当を使い切ると受給は終了です。もし90日以内に再就職が決まれば、残日数に応じて再就職手当を申請できます(例えば60日分残して就職すれば約残額の60~70%が支給される可能性があります)。
  • 再就職手当(参考): 仮にAさんが失業給付の途中で新たな就職先を見つけた場合、就業先が1年以上継続見込みの雇用であれば再就職手当を受けられるケースがあります。Aさんが基本手当の所定給付日数90日のうち30日分を受給し終えた時点で再就職したとすると、残日数は60日です。これは所定日数の3分の2以上残しての再就職に該当するため、**残り60日分の基本手当相当額の70%**が再就職手当として支給されます。仮に基本手当日額4,000円なら、60日×4,000円×70%=168,000円が一時金として受け取れる計算です。

この例のように、新入社員クラス(勤続年数が短い若年層)の自己都合退職では**「加入期間12か月以上+90日給付+給付制限あり」が一つのモデルケースとなります。受給総額は月給の半分程度×3か月分、つまりおおよそ給与1.5か月分~2か月分**ほどの支給にとどまります。失業保険だけで長期間生活するのは難しいため、計画的な求職活動で早期に再就職することが望ましいでしょう。

失業給付に関するよくある質問(Q&A)

最後に、基本手当に関して受講者からよくある質問とその回答をQ&A形式でまとめます。

Q1. 給付期間中にアルバイトをしてもいいですか?

A. 一定の条件下で可能ですが、事前申告が必要です。基本手当を受給中でも、週20時間未満の短時間労働で収入が一定額以下であれば、働くこと自体は禁止されていません。ただし労働時間や収入が多い場合、その日は「失業の状態」とみなされず基本手当が一時停止(その日の支給がゼロまたは減額)されることがあります。アルバイトをする際は、事前にハローワークへ申告してください。申告せずに収入を隠して受給すると不正受給とみなされ、発覚時には受給額の返還に加えペナルティ(追加徴収など)が科されます。正しく申告していれば問題ありませんので、規則を守って活用しましょう。

Q2. 再就職手当とは何ですか?どんなときにもらえますか?

A. 再就職手当とは、失業給付の所定給付日数をまだ残して早期に再就職した場合に受け取れる一時金です。失業保険を最後まで受け取るよりも早く働き始めた方が有利になるよう設けられた制度です。主な受給要件は「基本手当の支給残日数が所定日数の3分の1以上残して安定した職業に就くこと」などで、具体的には以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 受給残日数が所定日数の1/3以上ある状態で再就職したこと
  • 再就職先で1年以上勤務する見込みがあること
  • 待機満了後に就職したこと(給付制限期間中の場合はハローワーク紹介の就職が条件)
  • 前職の会社と関係ない会社に就職したこと(前の勤務先への出戻りではない)
  • 過去3年以内に再就職手当または就業促進手当を受けていないこと
  • 受給手続き前から内定していた会社ではないこと
  • 再就職先で雇用保険の被保険者資格を取得すること(週20時間以上の雇用)

再就職手当として支給される額は、残っていた基本手当相当額の一部(60~70%)です。具体的には、所定給付日数の3分の2以上を残して再就職した場合は残額の70%1/3以上残して再就職した場合は**残額の60%**が支給されます。例えば所定90日のうち60日分を残して再就職した場合は、残60日分の70%=42日分相当の基本手当が一時金としてもらえる計算です。

※再就職手当を受給するには必ず申請が必要です。再就職先が決まったら雇用保険受給資格者証を持参のうえハローワークで手続きを行いましょう。申請が認められれば、所定の審査期間を経て支給されます。

Q3. 病気や出産ですぐ働けない場合、失業給付はどうなりますか?

A. すぐに求職できない場合は**「受給期間の延長」手続きを行うことで、基本手当を後日に持ち越すことが可能です。通常、基本手当は離職翌日から1年以内に受給し終える必要がありますが、退職後に30日以上続けて就職できない事情**(病気・けがによる療養、妊娠・出産・育児、親族の介護、進学など)がある場合、ハローワークに申請することで受給期間を延長できます。

延長申請が認められると、本来1年の受給期間に「働けなかった日数」を加えることができ、就職できる状態になった後に改めて手続きして基本手当を受給できます。延長できる期間は最大で3年間までとなっており、1年と合わせて最長4年の間に受給する形にできます。例えば退職後に1年間育児に専念する場合、延長手続きをすれば育児期間が終わった後に基本手当の受給手続きを開始できる、という具合です。

  • 申請方法: 延長事由が発生した日(離職後に病気になった場合は発症日など)の翌日から起算して1か月以内に、住所地管轄のハローワークで所定の「受給期間延長申請書」を提出します(郵送や代理人申請も可能)。離職票と延長理由を証明する書類(医師の診断書等)が必要です。もし1か月を過ぎても、延長後の受給期間が終わるまで申請は受け付けてもらえますが、申請が遅れると十分受給できない可能性もあるので早めに手続きしましょう。
  • 延長後の手続き: 病気療養などが終わり、働ける状態になったら速やかにハローワークで受給手続き開始を行います。延長申請時に交付された「受給期間延長通知書」および離職票などを提出し、求職申し込みをすることで、延長していた基本手当の受給を開始できます。

この制度により、出産・育児等で失業給付を先延ばししたい場合でも権利を保全できます。ただし、65歳以上で離職した場合(高年齢求職者給付金の対象)は延長制度の適用外なので注意してください。

Q4. 失業給付を受けている間に再就職先が見つかったらどうすればいいですか?

A. 再就職が決まったら、速やかにハローワークに報告して基本手当の受給停止手続きを行います。再就職日以降は基本手当の支給対象外となりますので、通常は最後の失業認定を受けて受給終了となります。再就職先で雇用保険に加入する場合、離職票は発行されませんが雇用保険資格喪失確認通知書等で就職日の証明が行われます。

前述のとおり、条件を満たせば再就職手当の申請が可能ですので、忘れずに手続きを行いましょう。再就職後、一定期間勤務した後に離職した場合(例えば試用期間で辞めた等)、残っていた基本手当日数の受給再開ができるケースもあります。具体的には、再就職手当を受けた後でも受給期間内で基本手当の残日数があれば、受給期間満了日前に再び失業状態になったとき残りの基本手当を受け取ることができます(もっとも、新しい職場で雇用保険加入要件を満たし離職した場合は新たな受給資格での申請になることもあります)。

いずれにせよ、再就職先が決まったら早めにハローワークへ。就職日の前日までの失業認定を受けて基本手当の支給停止措置を行い、再就職手当の申請も同時に進めましょう。再就職後6か月以内で辞めてしまうと再就職手当の一部が支給されない場合もありますので、計画的に就業することが大切です。


以上が、新入社員・パートタイマーの方にも知っておいていただきたい失業給付(基本手当)の受給条件と手続きの概要です。「働きたいのに仕事がない期間」に支給される大切な制度なので、万一離職することになった場合には今回の内容を思い出し、落ち着いて手続きを進めてください。必要な条件や手続きを正確に理解し、失業給付を上手に活用することで、退職後の新たなスタートを安心して切ることができるでしょう。

参考資料: 厚生労働省「雇用保険の基本手当Q&A」、ハローワークインターネットサービスなど。


NotebookLMを使い、Podcast風に上記資料を説明しています。

生成AIは活用していますか?

まずは気になる情報から

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・特定技能関係の特定活動(「特定技能2号」への移行を希望する場合)
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 入管庁ホームページより
 「特定技能2号」の在留資格に変更を希望される方で、在留期間の満了日までに申請に必要な書類を揃えることができないなど、移行のための準備に時間を要する場合には、「特定技能2号」で就労を予定している受入れ機関で就労しながら移行のための準備を行うことができるよう「特定活動(6月・就労可)」への在留資格変更許可申請を行うことができます。
 として、特定活動への変更申請について手続き情報が掲載されています。

https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/10_00001.html

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・保育士の処遇改善に係る国への5県共同要望について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 千葉県ホームページより
 保育人材の確保の取組を進める中、大都市に隣接する埼玉県・千葉県・奈良県・和歌山県・佐賀県においては、保育士が給与水準の高い地域へ流出するという共通の課題を持つことから、5県が共同で、政府に対して要望を行いました。
 として、要望内容が掲載されています。

 http://www.pref.chiba.lg.jp/kosodate/press/2025/r7youbou-0707.html

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・教育訓練休暇給付金
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 厚生労働省ホームページより
 今年10月より教育訓練休暇給付金が創設(施行)されます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/kyukakyufukin.html

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(改定案)の意見募集の実施について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(改定案)のパブリックコメントが実施されています。
 実施期間
 2025年7月17日から同8月6日

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001431&Mode=0


生成AIが話題になり始めたのはほんの1,2年前ですが、その進化は日進月歩を超える速度です。
皆さんは生成AIを活用していますか?
私は、以前からお伝えしているように、色々と活用しています。

そしてまた、ここ1か月程度の間に、各種AIが格段の進化を遂げてきました。
個人的に一番の利用可能性があるのが、GeminiCLIとClaudeのアーティファクトです。
GeminiCLIとは、Gemini(つまりグーグル)が公開したツールで、コマンドライン(文字入力)によってAIを使うというものです。
コマンドラインを使ったことが無い人や使い慣れていない人は手を付けにくいところですが、コマンドラインで操作できる範囲の事は、AIが操作できてしまうという特徴があります。
例えば、ファイルを生成させることはコマンドラインでも可能なため、情報収集させ、その結果をテキストファイルとして特定の場所に保存させるという事が可能です。
もしGeminiCLIが無ければ、AIを使い情報収集を指示し、その結果を表示させ、その結果をコピペしてファイルとして保存するという作業を人間が行う必要がありますが、その部分の手作業が不要になります。
また、実際に使ってみたのですが、パソコンのトラブルシューティングにも対応が可能でした。
例えば、パソコンが何らかの不具合を起こして動きがおかしい時に、その症状をGeminiCLIに伝え対処を指示すると、原因の特定から解決の作業を行ってくれます。
なぜこれが可能かと言うと、パソコンの場合トラブルの対応は、マウスで操作するアプリで対応するよりも、コマンドプロンプトやパワーシェルで対応することが多いので、ある意味GeminiCLIの得意分野と言えるからです。
他にも、単に情報収集という範疇を超えた対応ができるので、そういう使い方を求めている人にはとても便利なAIだと思います。

次にClaudeのアーティファクトです。
これは個人的にはド肝を抜かれたレベルで凄いものでした。
これを使うと、生成AIを使ったWebアプリが作れてしまうからです。
それが、言葉で仕様を伝えることで、コーディング、デバッグ(問題点の修復)、UI(画面構成)、Webでの公開までも可能にしてしまうからです。
特に、APIというものを使うアプリを作ることも難なくこなし、公開する際はデプロイという作業も必要になるのですが、そこまでもアーティファクトが処理してくれます。
そして、私が一番魅力を感じた部分は、ここで作ったアプリのトークン(データのやり取り)により発生する費用は、利用者側のトークンの消費で対応するという所です。
一般的に、生成AIアプリが使うトークンは、アプリを作った側のトークンを消費するため、アプリを公開=使われる分だけ作った側の負担になるという仕様でした。
ChatGPTのMyGPTのように、当該生成AIの外観のまま、動作仕様を特化させるものの場合は、利用者のトークンを使うという仕様ではありますが、外観をWebアプリとして好きな外観(UI)にできるもの(メジャーなものはAIボットと言われるもの)はそうではありませんでした。
上記AIボットは、最近では企業や行政の問い合わせに導入されていますよね。

それで、私もさっそくアーティファクトでアプリを2つ作ってみました。
1つは練習も兼ねた遊び要素の強い、塗り絵画像生成アプリです。
これは、分の好きな写真や絵をアップロードすると、白黒のフレーム(縁の線のみ)の画像に変換してくれるものです。
例えば、子供などの好きなキャラクターの画像をアップロードして変換させると、塗り絵用の画像を作ってくれるので、子供が好きなキャラクターで塗り絵し放題になります。

もう一つは実務的要素も含んだもので、労災保険の労働者の死傷病等が発生したさいに報告する書類に記載する、状況を説明する略図を棒人間で描いてくれるというものです。
棒人間とは、頭を〇で描き、手や足や胴体を単一の線で描き人間の体勢などを現すときに使う絵を言います。
同乗の略図では、そのレベルの絵で良いので、棒人間で描くようにしました。
例えば、階段を踏み外して頭を打った等の状況を伝えると、その場面の絵を描いてくれます。
さらに、現場の写真もアップロードできるようにしてあるので、物の配置を大まかに描いてくれるようにもしてあります。
絵心の無い人にとっては、棒人間であっても、描くのには手間がかかるものですからね。
そして、AIが生成した画像について、細かな修正をしていくことが可能になっています。
上記の階段を踏み外した場面で、体が空中に浮いている状態の絵をAIが生成してきた場合は、「体は地面に着いた状態にして」と修正指示すると、他の部分はそのままで、体を示す棒人間の配置だけを修正してくれます。
こんな風に、手間のかかる部分をAIを使う事で効率的な事が出来るようになっています。

また、OpenAI社(ChatGPT)も、昨日かなり機能を強化したものを発表しました。
契約形態の関係で現時点ではまだ使えていませんが、月曜には使えるようです。
AIに指示して、買い物までも済ませることができる機能を持ったりもしたようです。

現状、AIがAIの進化をさせている状況でしょうから、更に進化は加速するでしょう。
つまり、使う者と使わない者との差が、加速度的に広がっていきます。
この波に乗り遅れたら、自分の価値を無くすことにもなりかねません。
全てを使いこなす必要はありませんが(自分も全てを理解しているわけではないですし)、自分の中で使える部分は使う癖は付けておいた方がいいですよ!

下記に上記2つのアプリのリンクを掲載します。(Claudeを使うためのユーザー登録が必要です)

塗り絵画像生成AIアプリ
https://claude.ai/public/artifacts/ad14fbbc-4d41-4ffc-86c7-f49938ae77a8

死傷病報告略図生成AIアプリ
https://claude.ai/public/artifacts/6de6c432-7dee-4002-a03c-03d891af46ba

労働者のための労働保険と社会保険④

第4回 厚生年金保険の基礎度の基礎

厚生年金保険とは何か

  • 公的年金の一種:厚生年金保険は、会社員や公務員など70歳未満の労働者が加入する公的年金制度です。国民年金(基礎年金)と並ぶ、日本最大級の年金制度の一つです。
  • 加入対象:原則として会社に勤務する人は全員加入します。正社員だけでなく、パート・アルバイトでも週20時間以上働き月収8.8万円以上など一定の条件を満たせば加入が義務付けられています。
  • 二階建て構造:厚生年金に加入すると同時に国民年金にも加入することになり、老後にもらえる年金が手厚くなります。このように、日本の年金制度は**「国民年金+厚生年金」の二階建て**と呼ばれます。
  • カバーするリスク:厚生年金保険から支給される年金には、老後の生活を支える老齢年金のほか、病気やケガで障害を負ったときの障害年金、加入者が亡くなったときに家族を支える遺族年金があります。働けなくなったり収入が途絶えたりした場合にも保障が及ぶようになっています。

厚生年金の保険料の仕組み

  • 保険料率と算定方法:厚生年金の保険料率は一律18.3%(2020年9月以降不変)です。毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)にこの率を掛けた額が保険料となります。給与額に応じて1~32等級の区分があり、その等級に対応する標準報酬月額に18.3%を乗じて計算します。
  • 労使折半:算出された保険料は会社と労働者が半分ずつ負担します(労使折半)。労働者負担分は給与天引きされ、事業主が自社負担分と合わせて納付します。例えば月給20万円の場合、厚生年金保険料は約36,600円で、そのうち本人負担は18,300円になります。
  • 国の財政負担:厚生年金の財源には被保険者と事業主の保険料だけでなく国庫(税金)の負担も含まれます。特に基礎年金部分の給付費用の2分の1は国が税金で負担しています。この国庫負担により、公的年金の給付水準を維持し将来の保険料負担が過度にならないようにしています(※残りの半分は現役世代の保険料で賄われています)。
  • 賦課方式:厚生年金は現在の現役世代の保険料収入で高齢世代の年金給付を賄う賦課方式を採用しています。将来自分が年金を受け取るときは、その時点の現役世代の保険料と税金が財源になります。この仕組みにより世代間で支え合う構造になっています(少子高齢化で一人当たり負担は増加傾向)。

年金を受け取るための資格と年齢

  • 受給資格期間:公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を受け取るには、原則10年以上の加入期間(受給資格期間)が必要です。2017年の制度改正で必要期間が25年から10年に短縮され、多くの方が年金を受け取れるようになりました。10年以上保険料を納めれば、厚生年金の加入期間が1か月しかなくても老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給できます。逆に言えば、保険料納付済期間(※免除期間等含む)が通算120ヶ月に満たないと年金は支給されません。
  • 老齢年金の開始年齢老齢厚生年金(および老齢基礎年金)の支給開始年齢は原則65歳からです。現在は男女とも原則65歳ですが、希望すれば後述のように繰上げ(早期受給)や繰下げ(受給開始の延期)も可能です。60~64歳で年金を受け取る繰上げ受給を選ぶと本来より減額され、66~75歳に遅らせる繰下げ受給では増額されます(詳細は後述)。
  • 障害年金の受給条件障害厚生年金は、厚生年金加入中に初診日のある傷病が原因で障害等級1級~3級の障害状態になった場合に支給されます。受給には保険料納付要件(初診日の前日に、加入期間の3分の2以上の保険料を納付済みであること等)が課されており、未納が多いと受け取れない場合があります。障害厚生年金は1級・2級の場合に老齢基礎年金相当の障害基礎年金も併せて受給できますが、3級の場合は報酬比例部分(厚生年金部分)のみ支給されます。
  • 遺族年金の受給条件遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者が在職中や在職中の病気・ケガで死亡した場合などに、その方に生計を維持されていた遺族に支給されます。遺族年金にも保険料納付要件(故人が年金受給資格を満たしていたか、直近の納付状況が良好であること等)があり、未納が多いと遺族に年金は出ません。また受給できる遺族には順位・範囲が定められており、主な対象は配偶者(※後述)や子どもです。例えば給与収入のある配偶者には一定の所得制限があり、年収850万円以上などの場合は遺族年金を受給できないことがあります(高収入で自立可能とみなされるため)。

厚生年金の種類(老齢・障害・遺族)

厚生年金保険から支給される年金には大きく分けて老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金の3種類があります。それぞれ支給条件や趣旨が異なります。以下に概要をまとめます。

年金の種類 **** 主な受給対象・条件 **** 支給開始の時期・期間
老齢厚生年金厚生年金の被保険者期間があり、受給資格期間(原則10年)を満たした本人が受け取る年金。【受給対象】会社員・公務員など厚生年金に加入していた人本人。原則65歳から支給開始(繰上げ受給で60歳~、繰下げ受給で最大75歳まで開始時期を遅らせ可能)。終身で支給。
障害厚生年金厚生年金加入中に初診日のある傷病が原因で障害等級1~3級に該当した本人に支給される年金。【受給対象】障害状態になった本人。要保険料納付要件(初診日前までに保険料納付率が2/3以上等)。障害基礎年金(1~2級)に上乗せして支給(3級は厚生年金部分のみ)。障害認定日(初診から1年6か月経過時が目安)以降に請求手続きし、認定された障害等級に応じて支給開始。以後、障害状態が続く限り支給(将来的に改善した場合は支給停止の可能性あり)。
遺族厚生年金厚生年金の加入者または加入者であった者が死亡したとき、その人に生計を維持されていた遺族に支給される年金。【受給対象】遺族の範囲と優先順位が定められており、*配偶者や子(第一順位)、父母(第二順位)、孫(第三順位)、祖父母(第四順位)*のうち、先順位の遺族1名(または子は複数可)が受給。【条件】故人が保険料納付要件を満たしていること。配偶者については主に妻が該当(夫は妻の死亡時55歳以上など条件)。死亡した月の翌月から支給開始。配偶者への遺族厚生年金は一生涯支給。ただし30歳未満で子のない妻の場合は5年間の有期給付となる等の制約あり。子に支給される遺族年金(遺族基礎年金含む)は18歳到達年度末まで(障害児は20歳まで)。

※遺族厚生年金の受給要件には、「死亡した当時その人によって生計を維持されていたこと」および一定の所得要件(前年収入850万円未満等)があります。対象となる遺族の例としては、(死亡当時その方によって生計維持されていた配偶者。子のある妻は年齢問わず、子のない妻は30歳以上や死亡当時妊娠中など一定の場合に支給)、(18歳未満or障害のある子)、条件を満たす(55歳以上で妻死亡後60歳から支給)などがあります。

保険料と将来受け取れる年金額の関係

  • 報酬比例:収入と加入期間で決まる:厚生年金の年金額(老齢厚生年金部分)は、加入期間中の給与・賞与の額と加入月数に応じて決まります。収入が高い人長く加入した人ほど、老後にもらえる年金額は増えます。これは、厚生年金保険料が報酬額に比例して決まり、その保険料負担に見合った給付が将来受け取れる仕組みだからです。
  • 老齢基礎年金との合算:会社員・公務員として厚生年金に加入していた人は、老後に老齢基礎年金+老齢厚生年金を受け取ります。一方、自営業やフリーランスなど厚生年金に加入していない人は老齢基礎年金(のみ)となり、その分給付水準に大きな差が生じます。たとえば2023年度時点で老齢基礎年金の満額は約年83万円(月額約6.9万円)ですが、厚生年金から支給される老齢厚生年金を上乗せでもらえる人の平均年金月額は約14.6万円(基礎年金を含む)にのぼります。これは平均的な厚生年金加入者のケースで、男性平均16.7万円・女性平均10.7万円と差があります(女性は非正規期間や中断が多いため低め)。
  • 具体例(将来の年金額):厚生年金の老齢給付水準は、個人の生涯平均収入と加入期間によって異なります。例えば、平均月収30万円で約40年間加入したモデルケースでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた年金額は**年間約180万円(=月額15万円程度)**になると試算できます。一方、平均月収20万円なら年金額は年間約135万円(=月約11万円強)ほどになります(概算)。収入が高い人ほど受給額も増えますが、現役時代の収入の何割を年金がカバーできるか(所得代替率)はおおむね6割程度と言われています。若い世代では将来的に給付水準の調整が見込まれるため、「自分の年金見込額」を年金定期便やねんきんネットで確認し、足りない分は個人年金や貯蓄で備えることも大切です。

老齢厚生年金の繰下げ受給制度

定められた年齢より受給開始を遅らせることで年金額を増やせる制度を**「繰下げ受給」といいます。厚生年金(老齢厚生年金)および老齢基礎年金は、希望により66歳以降に受給開始を繰下げることが可能です(最大で75歳開始まで)。繰下げ受給をすると受給開始を遅らせた月数に応じて年金額が増額**されます。

繰下げ受給の概要とルール

  • 増額率:繰下げによる増額率は1ヶ月あたり0.7%(年間8.4%)です。例えば65歳から70歳まで5年間(60か月)繰下げると42%増額され、75歳まで繰下げると84%増額(年金額が1.84倍)になります。増額は繰下げた期間に応じて月単位で計算されます(※65歳から1年間は月単位の細かな指定はできず丸一年単位になります)。
  • 選択自由:66歳から75歳までの間であれば、何歳で受給開始するかは1か月刻みで自由に選択できます。例えば「67歳6か月から」等、自分のライフプランに合わせて開始時期を決められます。繰下げを選択した場合、その開始年齢に達するまで年金は支給停止となり、達した時点で増額後の年金額で支給が始まります。
  • 一度決めたら変更不可:繰下げ受給を一度開始した後で途中でやっぱり早くもらうという変更はできません。また、繰下げ待機中に本人が亡くなった場合、遺族年金は増額されず65歳時点の本来額に基づいて計算されます(繰下げによる増額分は反映されない)。そのため、繰下げを選ぶ際は「年金をもらわずに待機している間に亡くなるリスク」も考慮する必要があります。

繰下げ受給の損益分岐点(元が取れる年数)

  • 損益分岐点とは:繰下げ受給では受給開始を遅らせる代わりに毎年の年金額が増えるため、「長生きすれば得、早く亡くなると損」という関係になります。何歳まで生きれば繰下げしたほうがトクになるかを示す年齢を損益分岐点(元が取れる年数)といいます。
  • おおよその目安:増額率0.7%/月(8.4%/年)の制度設計上、繰下げの損益分岐点は繰下げ幅によらず約12年後に設定されています。例えば70歳開始に繰下げた場合は約81歳11か月75歳開始の場合は約86歳11か月生きると総受取額で繰下げしない場合を上回ります。言い換えると70歳開始では82歳前後、75歳開始では87歳前後まで生存すると繰下げしたほうが得になる計算です。これは男女の平均余命にも近い値で、厚労省の簡易生命表によれば日本人の平均寿命は男性81.09歳・女性87.14歳です。平均的には女性は繰下げのメリットを享受できる可能性がやや高く、男性は繰下げによる損益がトントンになるケースが多いと言えます。もちろん個人の健康状態や寿命は読めないため、繰下げの判断は**「長生きのリスクへの保険」**と捉えて慎重に検討する必要があります。

繰下げ受給と税金・社会保険料の関係

  • 税金面の注意:年金を繰下げて年金収入が増えると、その分税金や社会保険料の負担も増える点に注意が必要です。公的年金等には公的年金控除がありますが、一定額以上になると所得税・住民税の課税対象となります。また年金収入が増えることで、後期高齢者医療保険や介護保険の保険料(所得に応じて決まる)も上昇します。例えば、独居で他に所得がない高齢者の場合、公的年金収入が約155万円以下なら住民税非課税ですが、繰下げで年金額がそれを超えると課税対象となり手取りが目減りします。繰下げにより年金額は増えても手取りベースでは増額分をまるまる受け取れるわけではないことに留意しましょう。
  • 在職老齢年金との関係:65歳以降も働く予定がある人にとって、繰下げ受給は在職老齢年金制度との兼ね合いもポイントです。在職老齢年金とは、高年齢者が一定以上の給与と年金を同時に受け取る場合に年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです(65歳以降は月収と年金の合計が47万円超で超過分の1/2停止等)。繰下げを選択すればその間年金を受け取らないため、在職老齢年金による調整を受けずに給与を得ることができます。つまり働いて収入があるうちは年金を繰下げておき、退職後にもらい始めることでトータルの受取額を増やす戦略も考えられます。もっとも、在職老齢年金の仕組み自体も見直しが進んでおり(2022年に支給停止基準額の緩和等)、将来の制度変更にも注意が必要です。

まとめ

厚生年金保険は、新入社員からパートタイマーまで幅広い労働者が加入する公的年金制度の要です。毎月の保険料は会社と折半で負担し、将来の老後資金だけでなく万一の障害・死亡時に家族を支える保障も含まれています。**「払った保険料は将来の自分や家族の年金として戻ってくる」**仕組みであり、特に会社員等が受け取る年金は国民年金のみの場合に比べ格段に手厚いものとなります。一方で少子高齢化に伴い現役世代の負担は増加傾向にあり、将来の給付水準も調整される可能性があります。公的年金だけに頼らず、企業年金や私的年金、貯蓄なども組み合わせて老後に備えることが重要です。

厚生年金の制度について基礎を押さえたところで、引き続き次回は具体的な年金額の計算方法や年金請求の手続きなど、より実践的な内容を学んでいきましょう。公的年金を正しく理解し、自分の将来設計に役立ててください。


NotebookLMを使い、Podcast風に上記資料を説明しています。(序盤で保険料の「労使へさん」と言っている部分は「労使折半(せっぱん)」です。)

外国人労働者雇用労務責任者講習を受講しました。

外国人労働者雇用労務責任者講習を受講しました。

この講習は、外国人労働者雇用労務責任者や外国人労働者雇用労務責任者を置く予定の事業所(会社)、外国人労働者雇用労務責任者になろうとする者等向けに実施されている無料の講習です。

入国管理局申請取次行政書士兼社会保険労務士の資格を通している者(私もですが)にとっては、目新しい内容があるわけではありませんが、外国人労働者雇用労務責任者になる者がどのような認識をもってその職務を行っているのかを知りたく受講してみました。

当該講習で各種公的資料が数多く紹介されているので、とても役に立ちますが、数が多すぎてどこを見てよいのか分からなくなるのではないかと思い、外国人労働者雇用労務責任者の方の役に立てていただこうと、下記の生成AIを使い各種資料全体から必要な情報をまとめてくれるものを作りました。

使ったツールはGoogle社のNotebookLMです。

このツールは、アップロードしたデータや参照対象にしたURLを基に回答してくれるので、余計な推測が入りにくく、ハルシネーション(簡単にいうと嘘)が発生しにくいという特徴があります。(とはいえ完全ではないので、確認は必要です)

今回の外国人労働者雇用労務責任者向けのNotebookLMは、外国人労働者への対応について、明確な答えと言うよりも、対応のアドバイスを求めるような感じで使えると思いますので、良かったらお使いください。

アップロードしてあるデータが、外国人労働者雇用労務責任者向けの資料になるので、前提等の細かな条件(プロンプト)を考えずに、質問したり、情報をまとめてもらう事が出来ます。

※Google社のサービスのため、Googleのアカウントでログインする必要があります。

https://notebooklm.google.com/notebook/d5a8b9be-a19b-4ad9-b104-3a16c81e0b66?original_referer=https:%2F%2Fwww.google.com%23&pli=1

労働者のための労働保険と社会保険③

第3回 健康保険制度の基礎

新入社員やパートタイマー、入社5年以内の若手社員の皆さんに向けて、健康保険制度の基本について解説します。日本の公的医療保険である健康保険は、病気やケガで働けないときに経済的負担を互いに支え合う社会保険制度の一つです。この資料では、健康保険の仕組みや給付内容、そして家族の扶養手続きまでわかりやすく説明します。

健康保険の概要と目的

  • 社会保険としての健康保険:会社や工場・店舗などに勤める人は「健康保険」に加入し、自営業者や農業従事者等は市区町村の「国民健康保険」に加入します。日本は国民皆保険制度を採用しており、全ての国民がいずれかの公的医療保険に加入することで、誰でも必要な医療を比較的低い自己負担で受けられる仕組みになっています。
  • 健康保険の目的:加入者本人(被保険者)およびその家族(被扶養者)が、業務外で病気やケガをしたときの治療費を負担したり、働けない期間の収入を補償したりすることです。具体的には、医療費の給付(治療費の保険負担)や、各種手当金(傷病手当金、出産手当金など)を支給することで生活の安定を図ります。これにより、加入者同士がお互いの医療費や生活保障を支え合う仕組みになっています。

医療費の自己負担割合と仕組み

  • 窓口負担の割合:健康保険証を医療機関で提示すれば、かかった医療費の一部(自己負担分)だけを窓口で支払えば済みます。原則として自己負担は3割(30%)であり、例えば5,000円の診療費でも1,500円を支払えば残りの3,500円は保険から支払われます。残りの費用は加入者が毎月納める保険料でまかなわれ、会社員の場合は保険料を会社と従業員が折半して負担しています。
  • 年齢による負担割合の違い:自己負担割合は年齢等により異なります。6歳(就学前)までは2割、義務教育就学後~69歳は3割70~74歳は2割(現役並み所得者※は3割)、**75歳以上(後期高齢者医療制度)は1割(現役並み所得者は3割)**と定められています。※「現役並み所得者」とは、引退後でも現役世代並みの収入がある高齢者を指します。
  • 保険診療の範囲:健康保険証を使えるのは、公的医療保険が適用される診療(いわゆる保険診療)に限られます。病院の診察・治療、処方箋による薬の調剤、入院費などが対象です。美容整形や自由診療など保険適用外の治療は全額自己負担になります。また、人間ドックや予防接種などは原則自己負担ですが、自治体の補助や会社の健康保険組合の制度で費用補助が受けられる場合もあります。
  • 保険証の役割健康保険証はあなたが公的医療保険に加入している証明書です。病院や薬局で受診するときは必ず提示しましょう。保険証を提示しないと10割全額を支払うことになってしまいますが、後日保険者に療養費として払い戻し申請をすることも可能です(手続きが必要になります)。

高額療養費制度(医療費の自己負担上限)

医療費が高額になった場合でも、高額療養費制度によって自己負担額には上限が設けられています。1か月(1日~月末まで)の自己負担額が一定の自己負担限度額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。この制度により、一度に多額の医療費がかかっても家計が過度な負担とならないようになっています。

  • 自己負担限度額の目安:上限額(自己負担限度額)は年齢や所得によって異なります。たとえば70歳未満の現役世代では、所得区分が一般的な場合「約8万円+(総医療費-26.7万円)×1%」が月額上限となります。これは医療費が高額になるほど若干上乗せがありますが、自己負担は概ね月9万円程度までに抑えられるイメージです(所得が低い場合は上限が約35,400円、所得が高い場合は上限がより高額に設定されています)。70歳以上では区分により上限額がさらに低く設定されます。
  • 世帯合算:同じ月内に同じ世帯(被保険者とその被扶養者)の複数の人が医療を受け、それぞれの自己負担額が21,000円を超えた場合、それらを合算して上限額を超えた分が支給されます。一家の医療費が重なっても、合算して高額療養費の対象にできるため安心です。
  • 手続きと支給:高額療養費の払い戻しを受けるには、健康保険組合や協会けんぽに申請を行います(会社の健康保険の場合、多くは診療から約3か月後に案内や支給があります)。限度額適用認定証という証明書を事前に発行してもらえば、入院など高額になりそうな場合に病院窓口で提示することで、支払いを上限額までにとどめることも可能です。支給までの流れをあらかじめ知っておくと、大きな医療費が発生したときにも落ち着いて対応できます。

傷病手当金(病気やケガで会社を休んだとき)

傷病手当金は、業務外の病気やケガで療養のために働けなくなり連続して4日以上会社を休んだときに、健康保険から給付される手当金です。仕事中や通勤中のケガは労災保険の対象ですが、それ以外の私傷病で収入が減ったときに、生活保障として支給されます。

支給条件:傷病手当金を受け取るには以下の条件を全て満たす必要があります。

  • 業務外の病気・ケガであること(仕事中や通勤中の事故は対象外)
  • 働けない状態であること(医師の意見を基に判断)
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること(最初の3日間は待期期間で無給、4日目以降が支給対象)
  • 休業期間中に給与の支払いがないこと(有給など給与が出ていれば減額・不支給。一部給与支給の場合は、その額が傷病手当金より少なければ差額支給)

支給内容:支給される傷病手当金の額は、休業前の平均給与のおよそ3分の2相当です。具体的には、直近12か月の平均標準報酬月額を30日で割った金額(標準報酬日額)の2/3が1日あたりの支給額となります。例えば平均標準報酬月額が26万円の場合、1日あたり約5,780円の手当金となります。傷病手当金が支給される期間は**支給開始日から最長1年6か月(18か月)**です。長期に及ぶ療養でも、1年半までは所得補償が受けられるので安心です。ただし途中で職場復帰した場合はその間支給が止まり、復帰と休職を繰り返しても通算で1年6か月が限度となります。

申請方法:傷病手当金を受給するには会社経由で健康保険組合等へ申請書を提出します。申請書には事業主の証明と医師の意見書(労務不能であることの証明)を記入してもらう必要があります。申請が受理され支給決定されると、通常は申請から2週間程度で指定口座に振り込まれます。会社を退職後も条件を満たせば引き続き最長1年6か月まで受給できる場合がありますので、退職時に療養中の方は手続きについて確認しましょう。

出産育児関連の給付(出産手当金・出産育児一時金)

健康保険には、出産に関する給付金として出産手当金出産育児一時金があります。それぞれ目的や対象が異なりますので、内容を押さえておきましょう。

出産手当金(産前産後休業中の所得補償)

出産手当金は、会社の健康保険に加入している女性社員(被保険者本人)が出産のため会社を休み、その間給与が支払われない場合に支給される給付金です。労働基準法では産前産後休業(産休)として「出産予定日の6週間前(双子以上は14週間前)から、出産後8週間は就業させてはならない」と定められています。多くの会社ではこの産休期間は無給扱いとなるため、その収入減を補う目的で健康保険から出産手当金が支給されます。扶養家族として健康保険に入っている配偶者(被扶養者)は対象外で、あくまで本人が被保険者である女性のみが受け取れます。

  • 支給期間:出産手当金の支給対象となる期間は、原則として出産日(実際の分娩日)以前42日(6週間)から、出産日の翌日以後56日(8週間)までの範囲です。双子以上の多胎妊娠の場合は出産日前98日(14週間)からが対象となります。この範囲内で、実際に「出産のために仕事を休んだ日」について支給されます(医師の指示や会社の産休制度により取得した休業日が該当)。例えば予定日より遅れて出産した場合、実際の出産日基準で遡って42日分が対象となるため、予定日基準より支給日数が延びるケースもあります。反対に予定日より早く生まれた場合、予定日前に取得予定だった産前休業分は結果的に支給対象外(働けたはずの日となる)になります。このように出産手当金の期間は実際の出産日を基準に計算されます。

  • 支給額:出産手当金の金額は休業中の1日につき給与の3分の2相当です。計算方法は傷病手当金と同様で、出産前の標準報酬月額の平均をもとに**「標準報酬日額÷3×2」(実質2/3)**の金額が日額として支給されます。支給対象となる日数分の合計額を受け取ることができ、通常は産前産後の休業が終了した後にまとめて申請し、一括で支給されます(健康保険組合によっては分割払いのところもあります)。例えば標準報酬月額が30万円の方なら、出産手当金の日額は約6,667円となります(30万円÷30日×2/3)。
  • 申請方法:出産手当金を受け取るには「健康保険出産手当金支給申請書」を提出します。申請書には本人が必要事項を記入し、医師または助産師に分娩証明を記入してもらい、勤務先にも休業期間中の給与支払状況を証明してもらう欄があります。それらをすべて揃えて会社経由で健康保険組合(または協会けんぽ)に提出します。会社を退職している場合でも、在職中に加入していた健康保険から出産手当金が受け取れるケースがあります(退職日までに出産手当金の支給要件を満たしており、かつ退職日に出産手当金を受給していれば、退職後も継続して受給可能)。該当する場合は速やかに申請手続きを確認しましょう。

出産育児一時金(出産時の一時金)

出産育児一時金は、出産にかかる費用をサポートするために支給される一時金です。被保険者本人だけでなく、国民健康保険や健康保険に加入しているすべての人(被扶養者も含む)が対象で、健康保険の扶養家族になっている配偶者が出産した場合でも受け取ることができます。1児につき一律50万円(産科医療補償制度加入分娩の場合、制度掛金含む)支給されます。これは2023年4月の制度改正で従来の42万円から引き上げられた金額です。双子なら100万円、三つ子なら150万円と、生まれた赤ちゃん一人ごとに支給されます。

  • 費用の直接支払制度:出産育児一時金は通常、健康保険から医療機関(産院)に直接支払われる直接支払制度が利用されます。分娩時に産院と所定の合意書を交わしておけば、産院は健康保険者から直接50万円を受け取り、本人は分娩費用から50万円を差し引いた残額だけを病院に支払えば済みます。例えば分娩費用が55万円だった場合、退院時に本人が支払うのは5万円程度になります。逆に出産費用が40万円など50万円を下回った場合は、健康保険から差額分(この例では10万円)を後日受け取ることができます。
  • 申請方法:直接支払制度を利用しない場合や、差額の支給を受ける場合には所定の申請が必要です。加入している健康保険組合・協会けんぽに「出産育児一時金支給申請書」を提出して請求します。申請には母子手帳の出産証明や、医療機関の領収書などが必要です。出産日の翌日から2年以内が申請期限となっています。
  • その他:出産育児一時金はあくまで出産に伴う費用の補助ですが、自治体によっては独自に出産費用助成や祝い金制度がある場合もあります。また会社の健康保険組合によっては、法定の50万円に付加給付として数万円上乗せしているところもあります(協会けんぽは付加給付なし)。加入先の制度も確認しておくと良いでしょう。

扶養制度(被扶養者の条件と申請フロー)

会社員の健康保険では、一定の条件を満たす家族を被扶養者として健康保険に加入させることができます。被扶養者となった家族は、保険料の負担なしで被保険者(本人)と同じ健康保険の給付を受けることができ、医療費も同様に低い自己負担で診療を受けられます。ここでは、扶養に入れる家族の範囲と認定条件、および申請の流れについて説明します。

  • 扶養に入れる家族の範囲:被扶養者になれるのは被保険者と生計を一にする親族です。具体的には、配偶者(事実婚含む)、子、孫、兄弟姉妹、父母・祖父母等の直系尊属が対象です(原則国内居住者に限る※)。範囲としては三親等内の親族までと定められています。例えば、自分から見ておじ・おば(叔父叔母)は三親等外なので対象外ですが、両親・祖父母・曾祖父母、兄弟姉妹、子・孫・曾孫、配偶者、および配偶者の父母・子は含まれます。
  • 収入要件(年収の壁):【扶養される家族の収入が一定以下】であることが必要です。具体的には被扶養者本人の年間収入が130万円未満であることが条件です(60歳以上または障害者の方は年間180万円未満)。月収にするとおおむね108,334円未満(60歳以上等は月15万円未満)です。これは俗に「130万円の壁」とも呼ばれ、パート収入などがこの金額を超えると扶養から外れて自分で社会保険に加入しなければならなくなります。収入には給与だけでなく年金収入や事業所得なども含めた総収入で判断されます。
  • 生計維持要件:扶養に入れるためには、その家族が主として被保険者の収入によって生計を維持していることが求められます。具体的には扶養する人(被保険者)の年間収入の半分未満であることが一つの目安です。例えば被保険者本人の年収が500万円で配偶者の年収が120万円なら、配偶者の収入は本人の年収の2分の1未満なので生計維持関係は満たすと判断されます。一方、扶養される家族の収入が被保険者の収入の半分以上ある場合、たとえ年収130万円未満でも「主たる生計維持者ではない」とみなされ扶養に入れないことがあります。
  • 別居の場合の条件:扶養する家族と別居している場合(単身赴任や家族が遠方に住んでいる場合など)は、生計維持関係をより厳密に確認されます。具体的には被保険者からの仕送り額が被扶養者の収入額を上回っていること、かつ仕送り額が生活費として十分な水準であり、定期継続的な送金であることなどが求められます。例えば別居の親を扶養に入れる場合、親の年金収入より多い額を毎月送金していて、その証拠(銀行振込の控え等)があることが必要です。単身赴任で家族が後から生活拠点を移す予定の場合などは例外もありますが、基本的に別居の場合は仕送り証明が重要となります。
  • 75歳以上は扶養に入れない:家族が75歳以上になると後期高齢者医療制度の被保険者となるため、その時点で健康保険の扶養から外れます(被扶養者ではなく後期高齢者医療の被保険者として各自保険証を持つ形になります)。例えば扶養しているお祖母さんが75歳到達時に後期高齢者医療へ移行するので、会社の健康保険の扶養からは自動的に外れます。

以上の条件を満たすかどうかによって、扶養に入れられるか判断されます。実際の認定では健康保険組合(または協会けんぽ)が収入証明書類(源泉徴収票、課税証明書、年金通知など)や同居・仕送りの状況を総合的に審査して決定します。


被扶養者の申請手続き:家族を扶養に入れる場合、「健康保険被扶養者(異動)届」という書類を会社経由で提出する必要があります。入社時に配偶者や子どもを扶養に入れる場合は、雇用契約書の提出時などに一緒に案内されることが多いです。届出には扶養する家族の氏名・続柄・生年月日・収入などを記入し、収入を証明する書類(前年の源泉徴収票や課税証明書、年金受給証明など)を添付します。会社の人事・総務担当者が内容を確認の上、健康保険組合または年金事務所に提出して審査・認定されます。認定されれば、その家族について被扶養者としての健康保険証が後日交付されます。逆に扶養から外れる場合(被扶養者の就職や収入増加、離婚、75歳到達など)は、「被扶養者異動届」を提出して扶養削除の手続きを行います。扶養から外れた家族は自分で国民健康保険に加入するか、新たな勤務先の健康保険に加入する必要がありますので、変更があったときは速やかに会社に申し出ましょう。

健康保険証の使い方、資格取得・喪失の基本

保険証の使い方と留意点

  • 健康保険証の提示:医療機関や薬局で診察・治療を受ける際は、必ず窓口で健康保険証(被保険者証)を提示します。保険証を提示することで、自己負担割合(一般は3割)だけの支払いで済み、残りの費用は保険者が負担します。保険証を持参し忘れた場合、一旦全額自己負担(10割)で支払いをすることになりますが、後日保険者に申請して7割分の払い戻し(療養費の請求)を受けることが可能です。ただし手続きの手間がかかるので、受診の際は忘れずに保険証を携帯しましょう。
  • 保険証の管理:保険証には氏名や生年月日、記号番号、保険者名などが記載されています。他人に不正利用されないよう、大切に保管してください。万一紛失・盗難に遭った場合は、速やかに会社経由で再発行の手続きを行いましょう。最近ではマイナンバーカードを健康保険証として利用できるオンライン資格確認も普及しつつありますが、当面は健康保険証も併用されます。
  • 保険証利用上の注意:保険証はあくまで加入者本人および被扶養者のみが使用できます。家族や他人に貸したりして不正に使わせることは厳禁です。また、加入者資格が無くなった後(会社を退職した後など)は、その保険証は無効となります。資格喪失後に保険証を使って受診すると無資格受診となり、後で保険給付分を返還するよう求められる場合があります。退職や扶養削除で資格を失った際は、必ず保険証を返却し、以後使用しないようにしましょう。

資格取得と喪失のタイミング

  • 被保険者資格の取得:会社に入社して所定の労働時間・日数の条件を満たすと(一般的には週の所定労働時間が正社員の3/4以上などの基準)健康保険・厚生年金の被保険者資格を取得します。通常、入社日(採用日)から資格取得となり、会社は5日以内に日本年金機構へ資格取得の届出を行います。入社からしばらくすると本人の健康保険証が交付されます(協会けんぽの場合、会社を通じて発行される保険証が手元に届くまで1~2週間程度かかります)。入社時に配偶者や子を扶養に入れる場合は同時に被扶養者異動届を提出することで、その家族も資格取得日から保険証の適用を受けられます。
  • 被保険者資格の喪失:会社を退職したときや、雇用形態の変更で社会保険の適用対象外になったときは、被保険者資格を喪失します。退職日の翌日(資格喪失日)以降は会社の健康保険は使えなくなるため、次の保険への加入手続きが必要です。具体的には以下の選択肢があります。
    1. 新しい勤務先の健康保険に加入:再就職先が決まっている場合は、その会社で新たに社会保険へ加入します。前職の保険証は退職日に返却し、再就職先から新しい保険証が交付されます。
    2. 国民健康保険(国保)に加入:すぐに就職しない場合や、フリーランス・無職期間ができた場合は、お住まいの市区町村役場で国民健康保険に加入します。原則として退職日の翌日から14日以内に国保の加入手続きを行う必要があります。その際、前の健康保険の資格喪失日を証明する書類(健康保険資格喪失証明書)が必要になるため、退職時に会社から受け取っておきます。
    3. 任意継続被保険者制度を利用:一定の条件を満たす場合、任意継続被保険者として退職後も引き続き今までの健康保険に加入し続けることができます。条件は「退職日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること」「退職日の翌日から20日以内に任意継続の加入申請を行うこと」です。この制度を利用すると退職後も最大2年間、同じ健康保険に加入できますが、保険料はこれまで会社と折半だった分も含めて全額自己負担(場合によっては在職時の約2倍の額)となります。それでも国民健康保険より保険料が安い場合や、家族が扶養に入っていて他の制度に入りづらい場合などに選択されます。任意継続を希望する場合は期限内に会社または保険者に申請しましょう。
  • 資格喪失時の保険証返却:退職などで資格を失った場合、健康保険証は会社に返却します(任意継続の場合は保険者に返却し、新しく任意継続用の保険証が発行されます)。資格喪失後は前述のように速やかに新しい保険に加入し、空白期間を作らないことが大切です。万一手続きが遅れて無保険の期間に医療機関にかかると、全額自己負担になってしまいますので注意してください。

以上が健康保険制度の基本的な内容です。健康保険は私たちの医療費負担を軽減し、休業中の収入も支えてくれる重要な制度です。会社員として働く皆さんは、制度の仕組みと給付内容を正しく理解し、いざというときに適切に活用できるようにしておきましょう。また、扶養家族の条件や手続きについても把握しておくことで、自分や家族の生活を守ることにつながります。困ったときは会社の総務担当者や健康保険組合に相談し、制度を上手に利用してください。


NotebookLMを使い、Podcast風に上記資料を説明しています。(序盤で保険料の「労使しはん」と言っている部分は「労使折半(せっぱん)」です。)

参議院議員の通常選挙が公示されました。

まずは気になる情報から

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・「労働契約等解説セミナー」開催のお知らせ
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 厚生労働省ホームページより
 「労働契約等解説セミナー」開催のお知らせ

https://roukeiseminar.mhlw.go.jp

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則の一部を改正する省令(陶磁器工業製品製造職種)案に関する御意見の募集について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則の一部を改正する省令(陶磁器工業製品製造職種)案に関するパブリックコメントが実施されています。

 実施期間
 2025年7月1日から同31日

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495250081&Mode=0

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則の一部を改正する省令(管路更生職種)案に関する御意見の募集について
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則の一部を改正する省令(管路更生職種)案に関するパブリックコメントが実施されています。

 実施期間
 2025年7月1日から同31日

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495250082&Mode=0

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・雇用保険法施行規則の一部を改正する省令
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 官報 令和7年7月1日(号外 第149号)にて
 雇用保険法施行規則の一部を改正する省令が公布され、同日施行されています。

 第百十八条の二第十一項の短時間労働者労働時間延長コース助成金に代えて、当分の間、社会保険適用時処遇改善コース助成金又は短時間労働者労働時間延長支援コース助成金を支給するものとし、同項の規定は適用しない。 ただし、 社会保険適用時処遇改善コース助成金の支給については、令和八年三月三十一日までの間、行うものとする。
 という内容です。

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・食品衛生法施行規則の一部を改正する省令
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 官報 令和7年7月2日(本紙 第1498号)
 食品衛生法施行規則の一部を改正する省令が公布され、令和8年4月1日より施行されます。

 ※全自動調理器を使う場合の改正
 
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・信託業法施行規則等の一部を改正する内閣府令
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 官報 令和7年7月2日(号外 第151号)にて
 信託業法施行規則等の一部を改正する内閣府令が公布され、令和8年5月25日より施行されます。

■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
・国民年金法施行令等の一部を改正する政令
・国民年金法施行規則等の一部を改正する省令
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 官報 令和7年7月4日(号外 第153号)にて
 国民年金法施行令等の一部を改正する政令が公布され、一部を除き令和7年10月1日より施行されます。
 国民年金法施行規則等の一部を改正する省令が公布され、一部を除き令和7年10月1日より施行されます。


7月3日参議院議員の通常選挙が公示されました。
残念ながら?衆参同日選挙にはなりませんでしたが、衆議院では少数与党となっている状況ですので、参議院でも少数与党状態になれば、改めて衆議院解散総選挙という事もありえます。
なぜ衆議院解散総選挙という事もあり得るのか?
それは国会での決議ルールがあるからです。

予算に関しては、衆議院の優越というルールがあり、衆議院で可決されれば、そのあと参議院で一定期間(30日以内)決議されなくても、衆議院で可決された内容で(正確には両院協議会を開いても意見が一致しない場合)執行が可能になるというルールがあります。
これは、予算は成立しないと行政機関が動けなくなり、国の運営が止まらないようにするためのルールです。
でも、海外などでこのようなルールがない国では、国営機関が止まるというニュースが流れたりしますよね。

また、国会では、予算だけではなく、法律(法案)も審議されます。
そして、法律(法案)については、衆議院の優越は適用されません。
そうすると、もし参議院で少数与党となり、与党案に賛成する議員がいない場合は、法律(法案)は否決されます。
国の運営や国民の生活に大きな影響のない法律であれば、では考え直して再度提出しましょう!で済みますが、そうではない法律の場合、特に予算執行の絡む法律の場合はそうはいきません。

予算と法律はとても緊密に関連しています。
なぜかというと、予算は執行するための根拠となる法律が無ければ執行することができないからです。
つまり、執行の法律の無い予算は、まさに絵に描いた餅となるわけです。

話しを戻します。
そこで、参議院でも少数与党になった場合、予算のからむ法案が否決され続ければ、政府与党は国の運営をまともに行なえなくなる訳です。
国民としては、国の運営が止まることは困りますが、国民の生活を苦しくする法案や運営に納得がいかない場合、その政府の行政運営を放置はできません。
そこで、政府の運営に納得のいかない多数野党が反対を続ければ、政府与党は「これでは国の運営ができない!私たちが正しいのか、野党が正しいのか!国民に信を問う!!」という選択をして、衆議院を解散し総選挙に流れ込むという可能性があるわけです。

選挙を実施するには、結構なお金を使うので、何度も選挙を実施するのは、税金の無駄遣いのようになりますので、やるならまとめてやった方がいいです。(地方の首長選挙の時で、市長が知事に立候補するなどの場合に、調整して一方が任期満了前に辞職するということをやったりするのはそのためです。)

とはいえ、小規模政党としては、同日選挙になるとお金(供託金)と候補者の準備が大変という事があります。
供託金は、立候補した選挙において、一定数の得票を得られれば返還されるというルールがあるので、別日になれば、当該お金をつかいまわせるというメリット、候補者についても、もし落選した候補者がいるばあい、次の選挙の候補者にするということも可能になります。

つまり一長一短があるわけです。

衆議院の解散は総理の専権事項なのでコントロールできませんが、ダメな総理のダメな運営が続けば、被害者は国民ですので、しっかり監視して声を上げることは重要です。

今回の参議院選挙は、3連休の中日という性格の悪い投開票日を与党は選びました。
現在の与党は、組織票(黙っていても投票してくれる人がいる)があるので、それ以外の人たちの投票が少ない方が、自分たちの候補者が当選しやすくなります。
そのため、みんな選挙に行かないような日を投開票日にすれば、より自分たちに有利になるという裏があります。
とはいえ、選挙は「期日前投票」という制度があり、投開票日の前でも投票が可能です。

私も前回と今回は期日前投票を行いました。

皆さんも、この姑息な組織票のある与党に好き勝手させないために、投票(期日前投票含む)を行いましょう!