まずは気になる情報から
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・「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」(譲渡担保法)について
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法務省ホームページより
「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」(譲渡担保法)について
として情報を公表しています。
譲渡担保法の概要や整備法の概要も掲載されています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00371.html
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・心の健康の問題による長期病休者の職場復帰のための職員向け手引き・担当者向けマニュアル
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人事院ホームページより
心の健康の問題による長期病休者の職場復帰のための職員向け手引き・担当者向けマニュアルが公開されています。
https://www.jinji.go.jp/kouho_houdo/kisya/2505/shokubafukki_manual_0001.html
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・社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律
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官報 令和7年6月20日(号外 第137号)にて
社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律が公布され、一部を除き令和8年4月1日より施行されます。
さて、先日(ブログは14日に書いていましたが公開忘れていて19日に公開したもの)まもなく改正ということを書いていましたが、18日に改正社会保険労務士法が可決成立しました。
SNSを見ていると、社労士自身が、今回の改正で何が変わるの? 行政書士法の改正程のインパクトないなぁ、、、
等の声が見受けられました。
ですので、そんな社労士さんと、社労士試験受験(実際には来年以降ですが)する方に向けて、少し解説したいと思います。
分かりやすいように、新旧対照+解説という形にしたいと思います。
今回の改正点は大きく4つです。
① 社会保険労務士の使命に関する規定の新設
② 労務監査に関する業務の明記
③ 社会保険労務士による裁判所への出頭及び陳述に関する規定の整備
④ 名称の使用制限に係る類似名称の例示の明記
また施行日については下記のとおり。
①及び②は公布の日から施行
③は令和7年10月1日から施行
④は公布の日から10日を経過した日から施行
です。
では①から行きましょう。
新 | 旧 |
第一条 社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、もつて豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする。 | 第一条 この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。 |
まず出だしの文言が違うのが分かると思います。
旧は「この法律は」、新は「社会保険労務士は」です。
これが何を意味するかというと、社労士と社労士法の上下関係が変わります。
旧規程では、社労士法により社労士という存在と資格(制度)を定め、その社労士の制度があるから社労士が存在しうる。という内容です。
しかし、新規程では、社労士が当然に存在し、その社労士のために社労士法があり、社労士は、第1条に定める使命のために本法に基づき行動する。
という内容になっています。
そして、「豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資すること」もその使命に含まれているので、労働者に限らない分野でも、国民生活に関する部分に正々堂々と関与していけるという事になります。
でどういうメリットか?となる社労士さんは、成年後見センターの存在をどのように見ていたのでしょうか?という話になります。
「成年後見センター」つまり、成年後見に関して社労士が関与する根拠がこれまで明確には社労士法に定められていませんでした。
でも、「豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資すること」という、労働者ではない国民個人のために活動することも使命になった訳です。
社労士の成年後見に関する活動も啓発もまだまだですが、社労士で成年後見やっている人は、こことても重要なはずなんです。
では次に②に行きましょう。
新 | 旧 |
第二条第1項三号 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。(これらの事項に係る法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査することを含む。) | 第二条第1項三号 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること。 |
これはいわゆる「労務監査」の話です。
労務監査自体は、自治体と話をしながら、自治体の施設管理者に対して労務監査を少しずつ実施してきていました。
個々の社労士が、顧問契約している企業において実施しているケースもあるでしょう。
ただ、これまでは、社労士は「労務に関する専門家」だから、とりあえず関連することの確認をしてもらうには適しているという相互認識に基づき実施されてきたと思います。
それが「(これらの事項に係る法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査することを含む。)」という文言が追加されたことにより、労働関係法令、労働協約、就業規則、労働契約の遵守に関して、確認を超えた監査という形の明確な業務が追加されたと言う事です。
労務監査に関する研修や書籍などで、比較対象に出すのが、会計監査です。
会計監査は、企業の会計に関する内容を、公認会計士等が監査する「法定」の業務ですし、一定規模以上の企業は必ず会計監査を受けなければなりません。
当該内容の「労務」に関する任意の監査が労務監査です。
今回は、まずは労務監査を社労士の業務に明確に含めるステップの法改正ということで3号業務としての追加ですが、最終的には1号業務(独占業務)にすることを社労士(連合会)は考えています。
独占業務になれば、コンサル等は当該労務監査を行えなくなり、そこ頃には、会計監査のように、一定規模の企業に労務監査を受ける義務等も制定されることでしょう。(これは私見ですが)
つまり、メリットとしては、社労士は「労務監査」を行いませんか?と言えるようになるわけです。
そして、監査は顧問などが行う事は利益相反になるため、顧問ではない社労士が行う事となるため、社労士間の連携をしておくことで、労務監査という仕事が飛び込んでくるという事になります。
では次に③に行きましょう。
新 | 旧 |
第二条の二 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。 2 前項の陳述は、当事者又は代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。 | 第二条の二 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができる。 2 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。 |
この違いは、訴訟法を勉強したことが無い社労士はピンと来ない内容です。
裁判所で行われる争いには、「訴訟事件」と「非訟事件」という種類があります。
訴訟事件とは、民事訴訟、刑事訴訟等、公開が原則のものを指します。
対して非訟事件とは、家事審判や労働審判等、非公開が原則のものを指します。
そして、旧法では「訴訟」代理人と・・・とされていまいたので、民事訴訟までこじれている事件でなければ補佐人にはなれなかった訳です。
労働関係の争いは、労働局や民間ADR、労働審判などである程度簡易に解決するための制度が整備されていますが、そこで話がまとまらなかった場合は、最後に裁判所に訴えて、民事訴訟で争うという流れになります。
つまり、裁判所での労働に関する争いに関しては、その最後の段階でのみ補佐人としての参加が認められていたわけです。
ちなみに、特定社会保険労務士になると、労働局や民間ADRでの代理人になる事は可能です。
話しは戻りますが、つまり今回の改正によるメリットは、特定社労士として、労働局や民間ADRでの代理に限らず、「裁判所」での労働審判(つまり初期の段階)においても、補佐人として社労士が参加することが認められました。
恐らく、労働審判においても、社労士が補佐人として参加していたことはこれまでもあったかもしれませんが、それは、法的には社労士として参加していた「わけではない」という事になります。(単なる民間人としての参加だったわけです)
細かな話をすると、労働法関係のサポートとして、弁護士を補佐していた部分については、当然社労士報酬ですので印紙税の除外になるでしょうけど、民間人として参加していた補佐人の時には、社労士業務として得た報酬ではないと言う事になります。
では最後に④について。
新 | 旧 |
第二十六条 社会保険労務士でない者は、社会保険労務士又は社労士その他の社会保険労務士に類似する名称を用いてはならない。 2 社会保険労務士法人でない者は、社会保険労務士法人又は「社労士法人その他の社会保険労務士法人に類似する名称を用いてはならない。 3 社会保険労務士会又は連合会でない団体は、社会保険労務士会若しくは全国社会保険労務士会連合会又は社労士会若しくは全国社労士会連合会その他の社会保険労務士会若しくは全国社 会保険労務士会連合会に類似する名称を用いてはならない。 | 第二十六条 社会保険労務士でない者は、社会保険労務士又はこれに類似する名称を用いてはならない。 2 社会保険労務士法人でない者は、社会保険労務士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。 3 社会保険労務士会又は連合会でない団体は、社会保険労務士会若しくは全国社会保険労務士会連合会又はこれらに類似する名称を用いてはならない。 |
これは、社会保険労務士の通称として明確に「社労士」を定めたと言う事です。(ちなみに弊所も「ゆあさいど社労士事務所」という名称です。)
社会保険労務士自身も自らを「社労士」と称するぐらい一般化した名称になっていましたが、当該略称を定めていなかったため、紛らわしい名称を使う輩がいて、国民に損害を与える可能性が指摘されていました。
数年前に、民間団体が、外国人の労務に関する「外労士」という紛らわしい名称の民間資格をつくり話題(問題)になりました。
外国人の在留資格に関しては、入管庁への申請と言う事で、書類作成は行政書士の独占業務、入管庁に届出を行う事で、申請取次を行政書士、弁護士等が申請の取次を行えます。(代理ではありません)
また、外国人の労務管理についても、日本の国内法が適用されることから、当然に社労士がその業務を行います。
それらいずれの資格も持たない者や、一方しか持たない者が、あたかも専門家であるかのように「士」のつく名称で業務(行政書士や社労士の3号業務を除く)を行う事は、国民や外国人にとって誤った情報や手続きがなされてしまうリスクが高まり、独占業務に手を出す違法行為の拡大に繋がりかねません。
そのような誤解による損害を未然に防ぐために、類似名称の使用禁止に「社労士」を追加したというものです。
メリットとしては、社労士という通称の認知度の向上です。
逆に「社労士」という通称を名乗っている社労士が、メリットが、、、とか言ってるのが本当に分からないですよね?
メリットが無いと思うのであれば、略称は使わずずっと「社会保険労務士」と名乗り続けるというのでしょうか?
これらの法改正は、全国社会保険労務士会連合会ではなく、政治団体である全国社会保険労務士政治連盟(政連)が主体的に活動し法改正のために尽力してくれています。
特定社労士という新制度の導入等も、政連の活動によるものです。
法改正により、全社労士は利益を得るのですから、改正のタダ乗りせず、社労士は政連に入りましょう!